ウェルビーイングをオフィスから: 東京建物が指標を開発

記事のポイント


  1. 東京建物がウェルビーイングスコアを開発、東京駅前の再開発などに実装
  2. 「笑う」や「適度な運動」など20個の向上因子を特定、個人の状態を可視化
  3. 国交省も「不動産ESG」で後押し、建設業界では住宅向けの民間認証も

東京建物がウェルビーイングスコアを開発した。「笑う」や「適度な運動」など20個の「ウェルビーイング向上因子」を特定した。質問に答えることで個人の状態を可視化する。今後、プロジェクトチームがサービス開発などを進め、25年に竣工予定の東京駅前の再開発ビルでの実装を目指す。不動産のウェルビーイングは、「不動産ESG」として国交省も後押しする。建設業界からは住宅向けの民間認証も登場した。(オルタナ編集部・萩原 哲郎)

建物の「ウェルビーイング」が注目を集める

ウェルビーイングは「身体的・精神的・社会的に良好な状態」を意味する。国内外で建物の利用者の健康性や快適性を評価する認証が立ち上がってきた。そのひとつであるCASBEEウェルネスオフィスでは90物件が認証を受ける。

東京建物では予防医学研究者の石川善樹氏が監修し、昨年10月に首都圏で働く1万人にアンケート調査を実施。その調査からウェルビーイングの向上に資する20個の「ウェルビーイング向上因子」を特定した。

具体的には「笑う」や「適度な運動」「気軽な会話」「仲間と集まる」などが挙がる。

東京建物によると、ウェルビーイングはこれまで個人の主観的な状態であるため測定が難しく、数十問におよぶ質問に回答することで測定するのが一般的だった。

同社は向上因子を特定したことで、より少ない質問数で個人の状態が可視化できる「ウェルビーイングスコア」を開発した。

今回の取り組みのきっかけは何か。コーポレートコミュニケーション部の高村笑里花氏は「新型コロナウイルス感染症拡大の影響でウェルビーイングに対する社会の意識が強くなったことがある」と話す。

今後、東京駅前での再開発ビルを中心に社会実装を目指す。高村氏は「まずウェルビーイングスコアをアプリで提供していく」と話す。それ以外のサービスについても、現時点では「検討中」となるが、開発を進めていく。

■国交省「不動産ESG」で後押し、民間認証も誕生

国交省もこういった動きを後押しする。

2021年9月から開いていた「不動産分野の社会的課題に対するESG投資促進検討会」は、2月20日に「『不動産ESG』実践ガイダンス(案)」の概要を示した。不動産の社会的インパクトを創出し、それを不動産価値に反映させていくことを目指す。

「不動産に係る社会課題等」として、「安全・尊厳」「心身の健康」「豊かな経済」「魅力ある地域」の4段階を示す。各段階には社会課題、その課題の解決に寄与する項目に分かれている。

たとえば「心身の健康」では、社会課題として健康・安全と快適・利便性を挙げる。具体的な項目として、前者ではAED設置や分煙、後者では温度・湿度などの快適な室内環境、バイオフィリックデザインなどがあがる。

民間認証も立ち上がる。建設コンサルティングの山下PMC(東京・中央)は22年10月に住宅向けに「健康住宅Lively7認証」をスタートした。

認証は、どういった建築資材を使用しているかや、住民同士のコミュニティなど7領域30項目で評価する。その評価に応じて、プラチナ、ゴールド、シルバーの3段階で認証する。

今後、ウェルビーイングはオフィス・住宅のキーワードとなりそうだ。

萩原哲郎

萩原 哲郎(オルタナ編集部)

2014年から不動産業界専門新聞の記者職に従事。2022年オルタナ編集部に。

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キーワード: #ESG

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