リコー、役員株式報酬に16の全ESG目標を組み入れへ

記事のポイント


  1. リコーは役員株式報酬を決める算定式にESG目標の達成率を組み込む
  2. 全社で定めた16のESG目標全ての達成率で評価し、割合は役員株式報酬の20%
  3. 財務と非財務の統合を加速してサステナ経営を推進していく

リコーは役員株式報酬を決める算定式にESG目標の達成率を組み込む。役員報酬とESG目標を連動する企業はじわりと増えてきたが、温室効果ガスの削減目標や女性管理職比率のみを指標に選ぶ企業が多く、割合も役員報酬全体の5~10%程度だ。同社では、全社で定めた16のESG目標全ての達成率で評価し、割合は役員株式報酬の20%とした。(オルタナS編集長=池田 真隆)

リコーがこのほど発表した新しい役員株式報酬の算定式では、株主総利回り(TSR)の成長率にESG目標の達成率を合わせた株式数に報酬基準額をかける。

リコーが定めた新しい役員株式報酬の算定式、株主総利回り(TSR)とESG目標達成率を合わせた

同社が役員株式報酬にESG目標を組み入れるのは初だ。これまでは株価の成長率で計算していた。この算定式については、6月に同社が開く株主総会で決議する。

財務目標と非財務目標を統合するための施策として、役員報酬とESG指標を連動させる企業はじわりと増えてきた。デロイトトーマツグループによる「役員報酬サーベイ(2022年度版)」では、ESG指標を役員報酬の算定式に組み入れた企業は7.4%(前年比1.0ポイント)だった。

日本企業の多くは、温室効果ガスの削減目標や女性管理職比率などを評価指標に選んでいる。役員報酬に占めるESG指標の割合は5~10%が多い。

リコーは役員報酬に占めるESG指標の割合については公開していないが、役員株式報酬に占めるESG目標の割合を20%とした。ESG目標については、脱炭素やジェンダーだけでなく、同社が持つ16の関連目標全てを評価指標にした。

16のESG目標は下記の通りだ。

▶はたらくの変革
1:顧客からの評価⇒(FY25目標、29%)
▶地域・社会の発展
2:生活基盤向上貢献人数⇒(1500~2000万人)
▶脱炭素社会の実現
3:GHGスコープ1,2削減率(2015年⽐) ⇒(50%)
4:GHGスコープ3削減率(2015年⽐)⇒(35%)
5:使⽤電⼒の再生可能エネルギー比率⇒(40%)
6:削減貢献量⇒(1,400千トン)
▶循環型社会の実現
7:製品の新規資源使⽤率⇒(80%以下)
▶責任あるビジネスプロセスの構築
8:CHRBスコアICT⇒(セクタートップ)
9:NIST SP800-171準拠
  自社基盤事業環境カバー率⇒(80%以上)
10:低コンプライアンスリスク企業⽐率⇒(80%以上)
▶オープンイノベーションの強化
11:共同研究・開発契約のウェイト⇒(25%)
12:デジタルサービス特許出願⽐率⇒(60%)
▶多様な人材の活躍
13:リコーデジタルスキルレベル2以上の人数(国内)⇒(4000人)
14:プロセスDX シルバーステージ認定者育成率⇒(40%)
15:エンゲージメントスコア(全社/地域別)⇒(RG3.91)
16:⼥性管理職⽐率(グローバル/国内)⇒(20%/10%)

リコーの阿部哲嗣・ESG戦略部ESGセンター所長によると、算定式を決める際に、限られたESG目標だけを指標にしていては、グローバルトップのサステナ経営とは言えないという議論が取締役会で起きたという。割合も5~10%程度では、「本気度が示せない」となり、国内でも高い割合の20%に決めた。

M.Ikeda

池田 真隆 (オルタナS編集長)

株式会社オルタナ取締役、オルタナS編集長 1989年東京都生まれ。立教大学文学部卒業。 環境省「中小企業の環境経営のあり方検討会」委員、農林水産省「2027年国際園芸博覧会政府出展検討会」委員、「エコアクション21」オブザイヤー審査員、社会福祉HERO’S TOKYO 最終審査員、Jリーグ「シャレン!」審査委員など。

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キーワード: #脱炭素

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