72号フェアトレードトピックス:ブルガリが認証チョコほか

■ブルガリが認証チョコレート

ブルガリは今年1月、フェアトレード認証チョコレートを発売した。ラグジュアリーブランドによる認証チョコレートは世界初だ。

好評につき3月11日から「サスティナビリティ・チョコレート」として再販した

日本のバレンタイン商戦において実現した世界初の取り組みは、日本でSDGsの関心が大きく高まっていることも背景にある。

ブランドによるフェアトレード導入は実は日本で加速している。昨年はポロ ラルフローレンがフェアトレード認証コットンタオルを発売し、その前にはトミーヒルフィガーが認証コットンのトートバッグをノベルティとして採用した。

フェアトレード原料は、かつては品質への不安なども指摘されていた。だが、フェアトレードのプレミアム(奨励金)を品質向上にも多く投じられてきたことでこの20年で大きく品質が向上した。こうしたハイブランドによる導入は、高い品質の証左にもなるだろう。


美しい花に潜む人権リスク

日本は切り花の27%を中国やコロンビア、マレーシアなどから輸入している。花は世界的に「母の日」やバレンタインで需要が急増することから、その時期を中心に生産国側では過重労働やハラスメント、農薬による健康被害も指摘されている。

花の生産国では過重労働やハラスメント、農薬による健康被害も指摘されている

米国政府機関の調査では、花の生産過程でコロンビアや中国などで強制労働が、インドやメキシコでは児童労働が発生していることが分かった。

SPDCが2023年2月に発表した調査では、東アフリカの花農園におけるフェアトレード労働者は、その他の労働者に比べて高い賃金とより良い労働条件を得ていた。労働者の権利保護やジェンダー平等においてもより配慮された状況にあると示された。

フェアトレードは実は花も対象にしているが、日本ではなかなか手に入らないの実状だ。しかしドイツではバラ市場に占めるフェアトレード認証品の割合が3割を超えている。

国内花卉産業ではロスフラワーへの取組みなどが注目を集めているが、今後生産国も含めた取り組みも欧州に続いて進むのではないか。


■コーヒーの認証、10年で15%増

コーヒーは持続可能性のための自主基準(VSS)の活用が特に進んでいる産品の一つだ。国際フェアトレード認証やレインフォレスト・アライアンス認証、4Cなどが含まれる。2022年10 月のIISD(持続可能な開発のための国際研究所)のレポートによると、2019年のVSSによる生産は世界のコーヒーの総生産量の21-45%に上った。2008年から11年間で年平均成長率13-15%程で推移した形となる。

コーヒー産業は世界で約1億2500万人の雇用を生む。世界のコーヒー農園の84%は2ha以下の小規模農家であり、取引先への交渉力が限られる上に、気候変動の影響も受けやすい産品のため、人権・環境リスクが高い。

世界では大手企業でも取り組みが進む。2022年8月発行のGCP(グローバル・コーヒー・プラットフォーム)レポートによると、ネスレやキューリグなどの世界大手メーカー・小売8社のコーヒー調達のうち、第三者認証の原料割合は約49%にも上る。

約7%を企業の独自のプログラム(例:ネスプレッソのAAAプログラムなど)が占める。同レポートはコーヒー農家が生活所得を得られていないことをシステム上の課題とし、業界として喫緊で取り組むべきとも指摘した。

shiozaki

潮崎 真惟子(認定NPO法人フェアトレード・ラベル・ジャパン事務局長)

デロイト、オウルズコンサルティングにて企業・政府・NPOに対する事業戦略やサステナビリティ分野のコンサルティングや人権デュー・ディリジェンス事業に従事し、2021年より現職。「児童労働白書2020」執筆

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キーワード: #フェアトレード

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