コオロギとイナゴの違いとは、昆虫食問題を考える

記事のポイント


  1. 2064年には世界人口は97億人となり、その後、人口は徐々に減少していくと予測される
  2. この人口増加を支えるには、かなりの量の食料が必要だ
  3. 国連食糧農業機関は昆虫食を勧めているが、それは、コオロギでななく、イナゴだ

日本の人口は減少し続けている。これは、紛れもない事実だ。そしてこの人口減少は、この先も長く続くことがわかっている。それは出生率の動きをみれば容易に推察できる。しかし、世界的に見ると、人類の総人口は まだまだ増加の傾向にある。

ある調査によれば、2064年には世界人口は97億人となり、これをピークとしてその後、人口は徐々に減少していくと考えられている。

それにしても、この人口増加を支えるには、かなりの量の食料が必要で、今のままではその確保が難しいと考えられている。

そこで国連食糧農業機関が2013年に対策案を出した。その案では、昆虫を食べることを勧めている。なぜ昆虫食が勧められているのかと言えば、家畜を飼育するより環境への負荷が少なく、また昆虫は栄養価も高い。よって、人類全体が抱えている食料問題の解決策として有用だと言う理由からだ。

これに賛同して、すでに日本でも、昆虫の飼育、量産を勧める企業が出てきて、昆虫を使った食品も開発され、販売もされている。

日本ではもともとイナゴや、蜂の子などを食べてきた歴史があるので、昆虫食は受け入れられやすいと考えているようだ。

しかし国連食糧農業機関が進めているのは、コオロギでありイナゴではない。イナゴは稲を食べて育つ。しかし、コオロギはそもそも雑色で、 特に死んだ仲間のコオロギを食べたり、共食いをすることでも知られている。

つまり、同じ昆虫の仲間とは言え、コオロギとイナゴでは全く違うのだ。

そしてまた一説によると、コオロギには毒があり、特に妊婦には「禁忌」とされている。不妊になるとも言われているので、注意が必要だろう。

タンパク質不足を解消するために、コオロギなどの昆虫食が勧められているのだが、そもそも私たち人類はそれほど多くの動物性タンパク質を摂取する必要がない、と言うところに早く気付くべきだ、

オプティマルフードピラミッド(イラスト・南景太)

筆者は、オプティマルフードピラミッドと言う食事のあり方を提唱しているが、それに則って食事を構成すれば、動物性タンパク質は意外なほど少なくて済む。

私たちが必要としているのはタンパク質ではなく、私たちの体内で合成してタンパク質を作り出すために必要な、アミノ酸なのだ。

そのアミノ酸も必須アミノ酸と呼ばれているたった9種類のアミノ酸があれば事足りる。そしてその9種類の必須アミノ酸は、穀物と豆類の食べ合わせで全て摂ることができる。

コオロギを食べるのと、穀物と豆類を食べ合わせて食事のペースに据え置くのと、どちらがいいのかはそれぞれの選択に任せることにするが、私自身はこれから先もコオロギを食べる気はさらさらない。ましてや、妻や娘や孫達にコオロギを食べさせようとは思わない。

私と同じように、子どもたちに興梠を食べさせたくないと考えている人は数多くいるのではないだろうか。

しかし、給食の中にコオロギの粉末を使った食品を出そうとしている動きがある。給食で使うと言う事は、ある意味強制的にそれを食べろと言っていることと同じであり、それは許されることではない。

何を食べるかの選択は、食べるその人に任せるべきだ。蕎麦アレルギーがある子どもに無理矢理、給食で出ているのだから蕎麦を食べろとは言わないはずだ。今は、小麦が食べられない、大豆が食べられない、牛乳が飲めないなどなどなど、様々な食品にアレルギー反応を起こす子どもが増えている。

コオロギには、カニやエビなどにも含まれる成分が存在する。このことを知らない人たちも多く、知らずに食べてアレルギー反応を起こした時に誰が責任を取るのかさえ、明確にされていない。これは単なる好みの問題などではない、重大な問題なのである。

コオロギを食べることを考える前に、私たちが考えるべきことが山のようにある。

一つは年間9.3億トンと言われる世界中の食品ロスのことだ。これは全世界で生産されている食品の3分の1に相当する。そしてそのロスの大半は、加工食品を製造する時に出るものだ。

もう一つは、各国、各地域での食料生産体制の見直しだ。食料危機が目前に迫っているにもかかわらず、いまだに減反政策を続けている意味はどこにあるのだろうか。第一次産業にまともな補助金を出さない理由はどこにあるのだろうか。

漁獲量が極端に減っている原因を究明しようとしないのは何故なのだろうか。

食と言うのは極めて個人的な問題であり、強制されたり、統制されるべきものではないと筆者は考える。このコオロギ食問題に関しても、誰がこのことを企て、誰がこの企てに投資しているのかを注視し続ける必要があるだろう。

kiyo

KIYO (南清貴)

KIYO(南清貴) 一般社団法人日本オーガニックレストラン協会代表理事 食事の大切さを提唱し家庭料理のシステム化の普及に取り組んでいる。著書『行ってはいけない外食【10万部突破】』(三笠書房)、『究極の食』(講談社)等多数。最新刊『大切な人に食べさせたくないもの食べてほしくないもの』(ワニプラス)。

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キーワード: #農業

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