崩壊するエネルギー基盤、世界はその先に何を見るのか--NPO法人「もったいない学会」会長 石井吉徳 2/2

9. あとがき「天災はまた繰り返される」か、いずれ来る関東震災、東京一極集中のリスク
地震は執拗に、保守的にその習慣を忘れずにやってくる。それを人間はすぐ忘れる。そして文明が高度化すると、益々災害に脆弱になる。地球上、地震、台風が繰り返しやってくる災害大国の日本だが、江戸時代まではその危険を忘れなかった。古い宿場はいつも残った、神社も決して災害の歴史、経験を忘れず、安全なところに作られていた。3・11の結果、それを改めて自然科学者は思い知らされている。

だが明治以来の技術過信近代人間は、地震の少ない欧米文明をただ信奉し、鉄道なども災害も考えず、ただ引いた。そして作られた停車場、その周辺の集落、町だった。関東大震災後、寺田は横浜から鎌倉まで踏査し、そのような停車場とその周辺を、自然が選んだように破壊しているのを見て、自然軽視、技術過信の文明を警告する。人間は益々災害に弱い社会を作る、脆弱性は「文明の進歩」とともに拡大、加速すると述べている。

正にそうだ、と思うしかない。東京、首都圏への機能集中化、高層化、国家中枢の過密集約化、恐ろしいほどである。関東大震災はいずれ必ずくる、自然の習慣は執拗にくり返される、文明進歩と共にその被害規模を拡大して。

地方分散は、その意味でも不可欠である、危険は分散するしかない。自然は人間の被害などかまってくれないが、技術過信人間にはそれがわからない、おそらくこれからも。
3・11では、加えて今までの歴史にはなかったことが起こっている。原発の大災害だが、それも「自ら招いた」のである。一箇所集中の原発群、安全神話を国民に押し付けながら、いつの間にか自らも信じ込んで、愚かにも地元は、落とされる膨大なお金に目がくらんだ。

以上が私が今まで述べてきた警告ですが、寺田虎彦がかって嘆いたように、無視されるかも知れませんが、記憶にお留め置き下さい。

プロフィール いしい・よしのり
東京大学名誉教授、「もったいない学会」会長、工学博士。1955年、東京大学理学部物理学科(地球物理学)卒業、帝国石油、石油開発公団などに16年間、東京大学工学部23年間(資源開発工学科助教授、教授)。93年退官、名誉教授。国立環境研究所副所長を経て96年から98年まで所長。その後、富山国際学園特命参事・同大学教授を経て、2006年もったいない学会設立、会長。

著書に『エネルギーと地球環境問題』(愛智新書)、『石油最終争奪戦』、『石油ピークが来た―崩壊を回避する「日本のプランB」』、『知らなきゃヤバイ! 石油ピークで食糧危機が訪れる』(いずれも日刊工業新聞社)など

NPO法人 もったいない学会
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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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