変わらない女性の政治参加 法制度か、市民の思いか

記事のポイント


  1. 2022年のジェンダー・ギャップ指数で、日本は先進国で最低レベルだった
  2. 項目別にみると「経済」(121位)、「政治」(139位)が極端に低かった
  3. 変わらない女性の政治参加率をどう解消していくべきか

世界経済フォーラムが発表した2022年のジェンダー・ギャップ指数で、日本の順位は146カ国中116位だった。これは先進国の中では最低レベルで、ASEAN諸国より低い結果である。項目別にみていくと「教育」は1位、「健康」は63位と高いスコアを示せている。一方「経済」は121位、「政治」は139位と、順位が極端に低い傾向がみられた。(伊藤 恵・サステナビリティ・プランナー)

企業では有価証券報告書に「女性管理職比率」「役員の男女別人数」の開示義務化など、ジェンダー・ギャップ解消にむけた取り組みが始まりだした。しかし、政治分野においては、いまだに実効性のある打ち手を見出せていない。

75年変わらない女性の政治参加率

女性の国会議員が初めて誕生したのは、戦後の1946年。衆議院議席の8.4%を占める、39人の女性議員が誕生した。

そして現在、衆議院の女性は465人中45人、9.7%の比率となっている。女性議員の割合の低さは、75年あまり経過してもほぼ変わらないという驚くべき状況だ。

諸外国に目を向けるとフランスやアメリカなど先進国は軒並み上昇傾向だ。日本と同じく根強く家父長制が残る韓国でも女性の政治参加率は2022年に18.3%となり、日本と差は大きく開いた状況だ(※1)。

2021年の衆院選後に実施された世論調査(※2)によると、女性の国会議員がもっと増えた方がよいと思うかどうか質問したところ「思う」は80%を占めた。

同じ質問をした14年2月の調査で「思う」は64%で、16ポイント上昇。このように世論は女性の政治参加を求めているのに、なかなか数字に結びつかない。

この原因のひとつとして、強制力のある法制度や仕組みが無いことが挙げられる。2018年に「政治分野における男女共同参画の推進に関する法律」が施行された。

衆参両院と地方議会の選挙において、男女の候補者の数ができる限り均等となることを目指す基本原則だが、あくまでも努力目標という位置づけだ。

2021年に一部が改正され、セクシュアルハラスメントやマタニティーハラスメントに関する対応も示されるようになった。

しかし、候補者数は義務化されず、いまだに努力目標のままだ。2020年に男女共同参画局が定めた、「2025年までに衆参両院それぞれの議員の候補者に占める女性の割合を、35%とする」という目標が達成できるかは不透明だ。

※1 内閣府 男女共同参画局「諸外国の国会議員に占める女性の割合の推移」(2022)
※2 読売新聞 世論調査部(2021)

法制度の力か、市民の思いか

女性の政治参加を促進している諸外国では、さまざまな取り組みが行われてきた。罰則などを含めた強力な法制度のもと推進した国もあれば、国民意識の変化や市民団体の取り組みが下支えしている国など、その国の事情によって推進力は異なる。

女性の政治参加を促進させる手法として代表的なのは、議員数や候補者数のうち一定割合を女性に割り当てるクオータ制だ。

すでに世界の約7割の国と地域で採用されている。フランスでは、法整備を整え、男女の候補者を同数と定めた。

各政党の候補者数の男女差が全候補者数の2%を超えた場合は政党助成金が減額となる罰則規定も設けている。このパリテ法が2000年に成立したことをきっかけに、女性の政治参加率は大幅に伸び、2000年の10%台から2022年には39.5%まで上昇している(※1)

一方で、クオータ制を採用しなくとも、女性の政治参加率上昇を成し遂げている国もある。アメリカで、活発なのが女性候補者を支援する民間の支援組織の活動だ。

団体女性候補者に対する資金援助、女性候補者への投票の呼びかけなどを行う。選挙支援だけでなく、女性候補者の養成に特化したプログラムなどもあり、さまざまな側面から女性の政治参加を後押しする土壌ができている。

ジェンダー平等の優等生である北欧のフィンランドやデンマークでは、歴史的に女性の政治参加や参政権の導入が早かったため、法制度がなくても女性の割合が高くなっている。

社会保障が充実していて、女性も社会進出しやすかったことと男女により性別役割負担が固定化せず各方面で女性が活躍していた歴史背景などが、政治分野にも好影響をもたらしていたといえる。

■日本での取り組みと展望

日本でも近年、市民団体レベルの活動は活発になってきた。政治分野のジェンダー不平等の解消を目指し、20代・30代の女性(トランス女性を含む)やノンバイナリー、Xジェンダー等の立候補を後押しする「FIFTYS PROJECT」。

先日おこなわれた統一地方選でもプロジェクトに賛同した候補者リストを公表しPR活動を展開していた。

統一地方選では、豊島区、北区、江東区で女性候補が誕生。これで東京特別区の女性区長は品川、杉並、足立の各区と合わせ、過去最多の計6人となった。

男女共同参画局が目標に定めた女性国会議員候補者35%への道のりはまだ遠いが、少しずつ進展している兆しともいえる。

次の国政選挙に向けて市民団体レベルの活動とともに、より実行力のある制度の整備が早急に望まれる。

itomegumi

伊藤 恵(サステナビリティ・プランナー)

東急エージェンシー SDGsプランニング・ユニットPOZI サステナビリティ・プランナー/コピーライター 広告会社で企業のブランディングや広告制作に携わるとともに、サステナビリティ・プランナーとしてSDGsのソリューションを企業に提案。TCC新人賞、ACC賞、日経SDGsアイデアコンペティション supported by Cannes Lionsブロンズ受賞。執筆記事一覧

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キーワード: #ジェンダー/DE&I

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