規格外の国産りんごを活用、天然由来の除菌スプレー

記事のポイント


  1. りんごの搾りかすから開発する天然由来の除菌スプレーが話題だ
  2. 開発費用をクラウドファンディングで募ると目標金額の4倍を集めた
  3. クラファンは継続中で、開発者は「循環の輪を伝えたい」と話す

りんごの搾りかすから開発する天然由来の除菌スプレーが話題を集める。開発費用をクラウドファンディングで募ると、目標金額の4倍となる197万円を集めた。除菌スプレーは石油由来が一般的だが、このスプレーは廃棄予定のりんごの搾りかすを発酵させて作った。(オルタナS編集長=池田 真隆)

りんごの搾りかすからできた「除菌スプレー」なので、製品名は「リンゴだったサニタイザー」に

「このスプレーを通して、『循環の輪』を伝えたい」——。こう話すのは、スプレーの開発に取り組むファーメンステーション(東京・墨田)の渡辺里奈社長だ。同社の創業は2009年、自社のことを「研究開発型スタートアップ」と名乗る。

同社の強みは、独自の発酵技術だ。休耕田で育てたオーガニック米や食品製造過程で出る副産物を、岩手県の自社工場でエタノール化する。日本には海外から輸入したエタノールを生成する工場が多いが、自社工場で未利用資源をエタノールにする技術は国内では同社しか持っていない。

その過程で出る発酵粕を化粧品の原料にしたり、地元農家が鶏や牛の飼料に使ったりしている。

組織内のダイバーシティも進んでおり、取締役の4割が女性だ。地域に多様性を創出し、魅力的なコミュニティー作りに貢献している。

2022年6月にはスタートアップ企業としては国内で初めて、国際認証「B Corp」を取得した。Bコープは社会や環境に配慮した公益性の高い企業に与えられる米国発の「認証制度」だ。

今年度中には、事業のソーシャルインパクトをまとめた報告書を発行する予定だという。

「廃棄物」を出さないためには「570万円が必要」

同社では独自の発酵技術を生かして、りんごの搾りかすから除菌スプレーの開発に取り組む。

規格外の国内産りんごは「加工用りんご」としてジュースやシードルに活用される。その際に出るりんごの搾りかすは、産業廃棄物として処理されることが多いが、この搾りかすを「資源」としてエタノールにする。エタノール化する過程では、「発酵かす」と呼ばれるかすが発生するが、牛や鶏の飼料にする。こうして循環の輪を作り出す。

1本(200ml)当たり廃棄予定のりんごを1.3個活用する

このスプレーは一般販売の予定はなく、クラウドファンディング限定で購入者を募集した。スプレーとりんごジュースの各1本にパンフレットが付いたセットが3000円から販売している。

目標金額は50万円だったが、募集を開始して1カ月半あまりで258人から197万1500円が集まった。5月21日まで購入者を募集する。

目標金額の約4倍が集まっているが、渡辺社長は「まだゴールではない」と話す。初回製造分で使うりんごは1700個に及ぶ。「用意した原料を使って作ることができる量を考えると、570万円を目指したい」。

目標に掲げた570万円までは、残り24日で370万円を集めないといけない。渡辺社長は、製品そのものに加えて、循環の価値を分かった上で購入して頂きたいと話した。

・クラウドファンディングで募集中のページはこちら

M.Ikeda

池田 真隆 (オルタナS編集長)

株式会社オルタナ取締役、オルタナS編集長 1989年東京都生まれ。立教大学文学部卒業。 環境省「中小企業の環境経営のあり方検討会」委員、農林水産省「2027年国際園芸博覧会政府出展検討会」委員、「エコアクション21」オブザイヤー審査員、社会福祉HERO’S TOKYO 最終審査員、Jリーグ「シャレン!」審査委員など。

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