公開対談: 「外苑再開発反対運動」の主唱者に聞く

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故・坂本龍一さんの手紙も後押しし、盛り上がりを見せる「神宮外苑再開発反対運動」の主唱者の一人は、米シカゴ出身の経営コンサルタント ロッシェル・カップさんです。ロッシェルさんはイェール大学卒業後、1988年から安田信託銀行(当時)の本社勤務を皮切りに、30年以上に渡り、日米の懸け橋として異文化コミュニケーションとコンサル業務を続けるビジネスパーソンです。オルタナは5月12日(金)12:00~13:00、ロッシェルさんをゲストに招き、編集長の森摂との公開対談を行います。なぜロッシェルさんは反対運動に携わることになったのか、今後の活動のポイントや見通しについて聞きます。(オルタナ編集部)

樹木1千本を伐採し、超高層施設や屋外広告物を設置へ

明治神宮外苑の再開発計画は3月22日、神宮第2球場の解体工事を皮切りに本格的に始まりました。今回の再開発で、1000本弱の樹木を伐採し、超高層施設(190m、185m)や屋外広告物が立ち並びます。100年近く都心の風到地区(緑などの自然的景観を維持する指定区域)として親しまれてきた外苑地区の歴史的な景観は大きく変わります。

再開発計画の完成イメージ、画像は「神宮外苑地区まちづくり」公式サイトから

明治神宮外苑地区には、新国立競技場や神宮球場、秩父宮ラグビー場などがあり、東京都は2013年6月に同地区を世界に誇る「スポーツクラスター(集積地)」と位置付けました。都はその方針をもとに2018年11月、「東京2020大会後の神宮外苑地区のまちづくり指針」を策定しました。

その指針では、民間事業者が同地区でまちづくりを行う際、次の3点に配慮すべきと規定しました。
1: 高揚感のあるスポーツとアクティビティの拠点
2: 歴史ある個性を生かした多様なみどりと交流の拠点
3: 地域特性を生かした魅力的な文化とにぎわいの拠点

そんな同地区では、東京五輪のレガシーを次世代に引き継ぐという名目で三井不動産など民間事業者による大規模な再開発計画が進みます。神宮球場(1926年建築)と秩父宮ラグビー場(1947年建築)の敷地を交換して建て替えるだけでなく、190mと185mの超高層オフィスビル、加えてホテルやマンションなども新設します。

もともと同地区については、都は景観を守るため条例で高さ15m以上の建築物を建てることを禁止していました。しかし、再開発に向けて、都はその規制を緩和しました。都は「公園まちづくり制度」を制定し、神宮外苑地区に建てる建築物の高さ制限を撤廃しました。さらに、屋外広告物の設置を許可しました。

同計画で再開発の対象とした主な施設は下記の通りです。

旧施設    新施設

神宮球場周辺⇒文化交流施設、ホテルなど
神宮第二球場周辺⇒新ラグビー場
秩父宮ラグビー場⇒新野球場、ホテル、オフィスビル(185m)など
伊藤忠商事東京本社ビル⇒オフィスビル(190m)

再開発予定の現況、画像は「神宮外苑地区まちづくり」公式サイトから
完成イメージ、事務所棟は190m、複合棟Aは185m 画像は「神宮外苑地区まちづくり」公式サイトから 

事業者は、三井不動産(代表者)、明治神宮、日本スポーツ振興センター、伊藤忠商事の4団体です。総事業費は3490億円。

都は今年2月17日に事業者が提出した再開発計画を認可し、再開発に向けた工事は3月22日に始まりました。まず神宮第二球場と伊藤忠商事本社ビルの解体を行います。解体後、新施設を建てます。2027年から秩父宮ラグビー場、2032年から神宮球場の解体が始まります。全エリアに新施設を建て終わるのは2036年を予定しています。

住民不在の「再開発計画」に19万人の反対署名集まる

この再開発計画を巡り、反対運動が活発化しています。文化遺産の保護活動を行う非営利組織日本イコモス国内委員会は、都に工事の中止を要請する文書を提出しました。故・坂本龍一さんも2月に小池百合子都知事に手紙を出し、計画の見直しを訴えました。

都民による反対の署名運動も盛り上がっています。小池都知事向けの署名は、5月2日時点で19万4000人から集まっています。この運動の主唱者は米シカゴ出身の経営コンサルタント ロッシェル・カップさん(ジャパン・インターカルチュラル・コンサルティング創業者・社長)です。

ロッシェルさんはイェール大学卒業後、1988年から安田信託銀行(当時)の本社勤務を皮切りに、30年以上に渡り、日米の懸け橋として異文化コミュニケーションとコンサル業務を続けるビジネスパーソンです。

この計画では、樹齢100年を超す樹木を1000本近く伐採しますが、ロッシェルさんは、「樹木を伐採することだけに感情的に反対している訳ではない」と話します。

反対する主な理由は下記の通りです。

1: 公益性の高い施設は全て廃止⇒
都の計画では「世界に誇れるスポーツクラスター」を掲げているが、再開発計画では軟式野球場、ゴルフ練習所、フットサルコート、バッティングセンターなど一般市民が利用できる公益性の高い施設を全て廃止する。スポーツ施設として唯一残るのは会員制のテニスクラブのみ。
2: 経済的に成り立つかの説明が不十分⇒
・本当に野球場とラグビー場は老朽化しているのか。「改修」だけでは不十分なのか。なぜ野球場とラグビー場の場所を交換して、新設するのか。新施設の利用予測やそれに伴う収益の分析が不十分など。
3: 球場の外壁がイチョウ並木に迫り、景観が大きく変わる⇒
新設する野球場は外苑地区の象徴であるイチョウ並木に迫るため、根を傷つけることが危惧される。球場の外壁によってイチョウ並木の景観は大きく変わる。
4: 環境への影響予測が不十分⇒
この再開発による環境への影響について、CO2排出量など具体的なデータ検証や説明が不十分。

公開対談では、ロッシェルさんが署名を立ち上げた経緯や今後の活動のポイントや見通しについて聞きます。

■公開対談: 「外苑再開発反対運動の主唱者」に聞く
とき: 5月12日(金)12:00~13:00@zoom
参加費:無料*サステナブル・ビジネス・リーグ(SBL)有料会員または無料会員。有料会員ではない方は無料会員登録をお願いします。無料会員登録はこちら

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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