G7広島サミット2023─あなたにとって大事な3つのポイント

この3年間、私たちはパンデミック、戦争、そして物価の高騰を経験してきました。困難の中で、命や生活を脅かす可能性のある気候危機にも直面しています。広島に集まるG7のリーダーたちには、世界の平和をまもる責任があります。私たちは、危険な核燃料や化石燃料に頼るのではなく、再生可能な気候政策を、ともに実現できるのです。

広島は、歴史に残る平和の街です。
いま、私たちは平和をまもるために十分なことをしているでしょうか?
広島で開かれるG7で、環境問題における3つの注目ポイントをチェックしましょう。

1. 平和について話しつつ、放射能汚染水の放出に明確な反対を表明せず

G7各国は札幌での共同声明の中で、日本政府と東京電力による福島第一原発の放射能汚染水の放出計画に対し、明確な反対を表明しませんでした。これはG7が科学や海洋環境の保護よりも政治を選択したことを意味します。

現在、福島第一原発敷地内のタンクに保管されている130万トン以上の汚染水の太平洋への放出計画をめぐっては、周辺の住民や漁業者、また太平洋諸島フォーラムを中心とする世界各国から、批判が集まっています。(注1)

世界有数の海洋研究機関や海洋科学者は、東京電力が主張する科学的正当性の弱さや、太平洋を放射能汚染水の廃棄場所とすることによる被害の危険性を指摘し、海洋放出に代わる代替案を求める声が上がっています。

衆議院第二議員会館前、汚染水の海洋放出計画への抗議行動(2023年4月)

日本政府は、放射能汚染水の海洋放出計画について、国際的な賛同を得ようと躍起になっていますが、その一方で、福島の漁業者を含む自国民、アジア太平洋地域の人々の人権や環境の保護は顧みていないかのようです。

日本政府は放射性核種を含む汚染水放出による海洋生物への影響を十分に調査していません。国際法上の越境海洋汚染の影響を含む包括的な環境影響評価の実施義務すら怠っており、放出計画は国連海洋法条約に違反するものです。

2. 2030年までに再生可能エネルギーを拡大することに同意しつつ、温暖化、大気汚染、早期死亡の原因となる石炭火力を段階的に廃止することに(日本のせいで)未だ同意せず

札幌での環境G7に実効的な気候変動対策を求める人々(2023年4月)

日本を除くG7諸国はそれぞれ石炭火力を段階的に廃止する期限を明らかにしています。

英国:2024年
カナダ:2030年
フランス:2022年
イタリア:2025年
アメリカ:2035年
ドイツ:2038年

石炭は最も温室効果ガスを放出する化石燃料であり、世界平均気温の1℃のうち0.3℃以上を引き起こしています。*

石炭の使用を完全に終わらせる明確なタイムラインが決まらなければ、パリ協定で定められた、21世紀半ばまでに地球温暖化を産業革命前のレベルと比較して1.5度に抑えるという目標の達成は不可能だといわれています。

3. 2035年までの化石燃料車の50%の廃止は約束するまでに至らず

ドイツ・フランクフルトで自動車への二酸化炭素排出規制を求めるグリーンピースのアクション(2019年9月)

日本以外のG7諸国の化石燃料車撤廃期限はすでに明らかになっています。

英国:2030年
カナダ:2035年
フランス:2035年
イタリア:2035年
アメリカ:2030年までに50%削減
ドイツ:2035年
日本:x(2035年。ただし化石燃料を要するハイブリッド車は廃止されない)

運輸部門のCO2排出量は全体の24%を占めています。

G7が札幌で発表した共同声明は、2035年までに自動車の排出ガスを全体として少なくとも50%削減できるよう毎年進捗を確認するとしていますが、具体的な計画や約束にはいたりませんでした。

あろうことか、日本は二酸化炭素排出実質ゼロであるゼロ・エミッション車の普及目標において、自動車産業が達成するべき目標に反対しました。
大臣会合声明は燃料電池車とプラグインハイブリッドの開発における水素、バイオ燃料、合成燃料の可能性にも言及。

IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)の報告書では、地球温暖化を1.5℃以内に抑え、最悪の気候危機をくいとめるためには、2050年までに二酸化炭素(CO2)排出量の4分の1を占める運輸部門の排出量を、9割削減する必要があるとしています。温暖化を1.5℃以内に抑えるためには、2030年までにゼロエミッション車100%を達成しなければなりません。

G7のリーダーたちにあなたの声を届けてください

インドネシア・バリ島、石炭火力発電所のそばで遊ぶ子どもたち(2019年8月)

日本は高度な技術で気候変動のリーダーになる可能性をもっていながら、リーダーシップを十分に発揮できていません。
政府とビジネスのリーダーは、気候危機と闘う意思表示をしなければなりません。

トヨタのような大手自動車メーカーは、化石燃料車の段階的廃止を遅らせるのではなく、一刻も早くゼロエミッション車への全面移行を具体的に示すことで、自動車産業全体の脱炭素化を後押しする責任があります。

自動車産業だけでなく、電力会社やエネルギーに関わる産業、エネルギーを消費するすべての産業が脱炭素に大きく踏み出すには、日本を含む世界のリーダーたちの決断が重要です。

地球の未来をまもるには、彼らの言葉が何十億もの人々の生活にとって重要であることを認め、すべての化石燃料開発に終止符を打つことを宣言してもらう必要があるのです。

彼らに、気候変動と私たちの生活と命に対する責任感を持って、平和的な気候政策を実現するアクションに、ぜひ参加してください。

G7サミットで、岸田首相に持続可能なエネルギー政策の約束を求めよう (greenpeace.org)

(注1) 太平洋諸島フォーラム(2023年1月) “Japan must work with the Pacific to find a solution to the Fukushima water release issue – otherwise we face disaster”

greenpeacejapan

国際環境NGOグリーンピース・ジャパン

グリーンピースは、世界規模の環境問題に取り組む国際環境NGOです。問題意識を共有し、社会を共に変えるため、政府や企業から資金援助を受けずに独立したキャンペーン活動を展開しています。本部はオランダにあり、世界55カ以上の国と地域で活動し、国内だけでは解決が難しい地球規模で起こる環境問題に、グローバルで連携して取り組んでいます。執筆記事一覧

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キーワード: #SDGs

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