「地熱発電」は日本の再エネ普及の切り札になるのか

記事のポイント


  1. 再エネのうち、地球内部から発生する熱エネルギーを利用した「地熱発電」が注目されている
  2. 日本における地熱発電の導入は遅れており、普及が進んでいない状況
  3. 地熱発電は地球温暖化対策だけではなく、地域経済の活性化にもつながる

地球温暖化で温室効果ガス(GHG)の削減が急務となる中、再生可能エネルギーの普及が求められています。特に注目されているのが、地球内部から発生する熱エネルギーを利用した「地熱発電」です。しかし、日本においては、地熱発電の導入が遅れており、普及が進んでいません。本稿では地熱発電について解説し、その理由と解決策を考えます。(株式会社サンエー マーケティング部・本田 陸)

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そもそも「地熱発電」とは何か

地熱発電とは、地球内部の高温な岩石層から発生する熱エネルギーを利用して発電する方法です。地熱発電は、温泉地域や火山地帯に多く存在します。地熱発電においては、地中の熱水を地上に引き上げ、蒸気を発生させ、その蒸気で発電することができます。

地熱発電は、再生可能エネルギーであり、二酸化炭素の排出量を抑えることができます。日本では地熱発電所の70カ所以上が稼働し、再エネに占める割合はおよそ2%に達しました(日本地熱協会調べ)。

日本における地熱発電への課題

日本は地熱発電に適した地域が多く、地熱発電の技術も先進的なため、多くの地域で地熱発電が行われています。しかし、日本の地熱発電にはまだまだ課題があります。

まず、地熱発電に必要な熱水を供給するためには、地下深くにある地熱水を掘り出すことが必要です。しかし、地下水の枯渇や地盤沈下の問題があるため、地熱発電に必要な熱水を確保することが難しい場合もあります。

また、同じ地下水を利用している温泉業者との競合が生じることがあります。発電所が熱水を抽出することで、温泉の湯量や温度が影響を受ける場合があります。

このため、地熱発電所と温泉業者の間で利用の調整や協力策が必要となり、普及に遅れが生じる場合が考えられます。ただし、実際には地熱発電所の稼働によって、近隣の温泉の湧水量が減ったり、枯れたりした例は報告されていません。

地熱発電所の建設には多額の投資が必要で、そのためには地熱発電所の稼働期間が長くなければなりません。しかし、地熱発電所の運営にはメンテナンスや修理が必要で、それには専門知識や技術を持った人材が必要です。こうした人材の不足や、地熱発電所の老朽化による設備更新の必要性が課題となっています。

地熱発電は発電量が安定していないことも課題の一つです。地熱発電に必要な地下水の温度が安定していない場合や、地震などによる地盤変動によって地熱水の流れが変わる場合があり、それによって発電量が大きく変動することがあります。

これらの課題に対して、日本の地熱発電業界では、技術の改良や専門人材の育成などに力を入れて取り組んでいます。

また、地熱発電所を複数設置して発電量を安定化させるなど、発電量の増加や安定化に向けた取り組みが進められています。今後も、地熱発電に関する研究開発や技術革新が進むことで、より効率的で安定した地熱発電が実現されることが期待されます。

日本にある地熱発電所

日本においては、国内にいくつかの地熱発電所が存在しており、その発電量は年々増加しています。以下に、主要な地熱発電所の実績を紹介します。

草津発電所(群馬県): 草津発電所は、日本で最初に建設された地熱発電所であり、1956年に稼働を開始しました。現在は、9基の発電機で発電を行い、発電量は約99,000kWです。

阿蘇発電所(熊本県) 阿蘇発電所は、1975年に稼働を開始しました。現在は、4基の発電機で発電を行い、発電量は約70,000kWです。

鶴見緑地発電所(神奈川県):鶴見緑地発電所は、東京都内から近い神奈川県川崎市にあります。2015年に稼働を開始し、現在は1基の発電機で発電を行い、発電量は約2,800kWです。

利尻町発電所(北海道):利尻町発電所は、北海道利尻島にあります。2018年に稼働を開始し、現在は1基の発電機で発電を行い、発電量は約3,200kWです。

松川地熱発電所(岩手県):松川地熱発電所は、1966年10月に完成した、日本で最初に生まれた地熱発電所です。1993年6月に22,000kWから23,500kWに出力変更しています。

八丁原発電所(大分県):八丁原発電所は、高原と温泉の町・九重町に位置する日本でも最大規模の地熱発電所です。九州電力の2番目の地熱発電所として1977年に運転を開始しました。発電能力 1・2号機があり、それぞれの出力が55,000kWで、合計110,000kWの電気を発電することができます。

以上のように、日本にはいくつかの地熱発電所がありますが、その多くは比較的小規模であり、発電量は数千kWから数万kW程度です。また、地熱発電所のほとんどは火山地帯に集中しているため、地熱資源がある地域に限られています。

日本における地熱発電へのチャンス

日本における地熱発電へのチャンスとしては、以下のような点が挙げられます。

まず、日本は地熱資源に恵まれています。日本全国に温泉があり、地熱発電に適した場所も多く存在しています。また、世界でも有数の地震国であるため、地熱発電による安定した電力供給が求められることから、地震対策として地熱発電の導入が進められることがあります。

地熱発電は、風力発電や太陽光発電と比較して、天候や季節に左右されにくいため、安定した電力供給が可能です。さらに、発電時に排出される二酸化炭素の量も少ないため、地球温暖化対策にも貢献できます。

さらに、地熱発電は、地域経済の活性化にもつながります。地域にある温泉や地熱資源を活用することで、新たな産業を育成することができます。また、地熱発電によって得られた電力は、地域の電力需要を賄うことができるため、地域の自立性の向上にもつながります。

以上のように、日本においても地熱発電には大きなチャンスがあります。政府や企業が積極的な導入策を進めることで、地熱発電を通じて、地域の発展やクリーンエネルギーの確保につながることが期待されます。

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