記事のポイント
- 「雑草」という草がないように、「雑木」という木も存在しない
- 植えた木とそれ以外の木を区分けし、除伐対象として考えがちだ
- しかし、実はお互いを棲み分けて共存を計ろうとしている可能性が高い
NHK朝ドラ「らんまん」のおかげか、牧野富太郎の「雑草という草はない」という言葉が知られるようになった。その言葉に倣えば「雑木という木はない」と言わねばならない。(森林ジャーナリスト=田中 淳夫)

林業従事者は、スギやヒノキなど植林した木以外、つまり勝手に生えた木はみんな雑木と表現する。とくに広葉樹はほとんど雑木と呼んでいる。
そもそも山仕事をしても、植物のことをあまり知らない。多少とも生育環境などの知識を持つのは植林樹種だけで、広葉樹や草については名前も正確な生態も興味がないのが通常だろう。それは行政の政策担当者も同じである。
だが雑木という木はなく、それぞれに名前があり形態も生態も違う。「雑木林」と言った場合はさまざまな種類の木々が生えている森という意味合いもあるが、「雑木」には役立たずの木、邪魔な木というニュアンスが強まる。
林業にとって育てるべきはスギやヒノキなど植えた木だけで、ほかの木は邪魔な存在という認識なのだ。
だから雑木は、林業では除伐対象になる。植林樹種とそれ以外の草木は、土壌の養分や水分、光などを奪い合う競争関係にあると考える。そこで人間が介入し競争相手を駆逐(除伐)して植えた木の成長をよくしようとするわけだ。
多様な木々が生物多様性を豊かに