日本政府の「SDGsアクションプラン」は機能しているのか

記事のポイント


  1. 日本のCSRは企業の信頼性向上や人材採用・定着、リスク低減が中心だった
  2. SDGs以降のサステナ経営の目標は政府目標とベクトルを合わせるべきだ
  3. しかし現在の政府目標は具体性に乏しく、企業の目標への落とし込みは難しい

日本のCSR元年から約20年。この間、企業が適切にCSR(企業の社会的責任)を果たすことは、企業としての信頼性向上や人材採用・定着への好影響、法令違反のリスクを低減する意味合いが強かった。一方、SDGs以降のサステナブル経営への企業の個別具体的な目標は同時に、企業が存在する国(政府)のサステナブルな社会への目標・アプローチとベクトルを合わせるべきだ。日本のSDGs対応はどうだったか。(サステナ経営ストラテジスト・松田雅一)

企業のサステナ経営の目標は政府のサステナ社会への目標とベクトルを合わせられているか

いわゆる「人新世」の時代となり、企業が単にCSRを概念的に果たしているだけでは社会の持続可能性を危うくする状況を食い止められない。2015年に国連が採択したSDGsへの企業の取り組みが今や重要かつ急務となっている。 

企業におけるサステナブルな経営を考えるとき、まずは企業理念、経営方針をステークホルダーに開示し取り組み姿勢を明示したうえで、個別具体的な目標に対して評価指標を設けてアプローチしていくことが期待される。 

日本では、外務省のウェブサイトに「ジャパンSDGsアクションプラットフォーム」というページがあり、総理大臣を本部長、官房長官、外務大臣を副本部長とし、全閣僚を構成員とする「SDGs推進本部」が設置された。 

その中で、持続可能な開発目標(SDGs)に関する自発的国家レビュー(VNR)があり、VNR2021の中で主な取り組み課題と併せて各目標の達成状況をレビューし、続いてSDGsアクションプラン2023でアクションプランを列記した(2023年6月現在)。 

SDGs推進本部、幹事会、円卓会議において、「SDGs実施指針」および「SDGsアクションプラン」に基づく取り組みの進捗状況を定期的に確認し、必要に応じて見直すとともに、ステークホルダー会議など、可能な限り多くのステークホルダーの声を反映させるとある。 

このページは、極めて精緻で、そつなく網羅的な日本らしさを垣間見ることができる。ただし、そこには大きな課題もある。 

まずは、このページを探す意思を持って探さなければ企業や国民には分からない。そこで初めてSDGs推進本部なるものが設置されていることに気づく。定性的な目標が多く、具体的数値目標に乏しい。目標達成へのアプローチが見えず、レビューも統計結果を追いかけているのみである。 

菅元総理の「2030年度において、温室効果ガスを2013年度から46%削減することを目指し、さらに、50%の高みに向けた挑戦を続け、2050年には、カーボンニュートラルの実現」だけが、独立独歩している。 

これでは、国・政府の目標やアプローチを、企業の目標やアプローチに落とし込むことは難しいはずだ。この問題に限らず、真の意味でのステークホルダーとの対話こそが、今の日本では欠けている。 

松田雅一(まつだ・まさかず)  
静岡大学法学科卒業、東レエンジニアリング株式会社入社、海外関係会社(韓国)の社長を4年間歴任後、同社取締役、常務取締役を9年間担当。 
2020年3月第1回サステナ経営検定1級合格(CSRストラテジスト) 
2022年6月役員退任(専務理事として継続中) 

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キーワード: #CSR

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