社外取締役に求める「行動指針」、経産省が12の想定例

記事のポイント


  1. 経産省はこのほど、経営課題に対する社外取締役の対応ガイドを公開した
  2. 取締役会での意思決定など社外取締役に求める「行動指針」をまとめた
  3. アクティビストファンドからの要望など12ケース別に紹介している

経産省はこのほど、経営課題に対する社外取締役の対応ガイドを公表した。取締役会での意思決定やステークホルダーとの対話など12ケース別に、社外取締役が果たすべき役割をまとめた。(オルタナS編集長=池田 真隆)

上場会社には取締役会の3分の1以上を社外取締役にすることが求められている

経産省は6月30日、「社外取締役向けケーススタディ集」を公表した。社外取締役が取締役会などで直面することがある場面や課題を12ケースに分けた。各ケースで社外取締役として求められる行動や注意すべき点を119頁の資料にまとめた。

12ケースは下記の通り。

1, 取締役会において中期経営計画の議案が付議された。社外取締役として、どのように評価・関与すべきか。
2, 今後のガバナンス体制について意見を求められた際に、どのような意見を述べるべきか。
3, 指名委員として社長の後継者を検討することになった。どのように指名プロセスに関与すべきか。
4, 就任先企業の業績悪化が進んでいる状況で、社外取締役として執行側をどのように評価し、改善を働きかけるべきか。
5, 報酬委員として、役員報酬制度をどのように評価し、発言すべきか。
6, 業務執行上の重要な意思決定(大型事業投資、M&Aなど)の議案が付議された場合に、どのようにリスクを評価し、ブレーキをかけるまたは後押しをするべきか。
7, 就任先企業が外部から買収提案を受けた際に、社外取締役として何を検討し、どのように振る舞うべきか。
8, 親会社など支配株主がいる場合、支配株主との取引等につき、取締役会でどのように振る舞うべきか。
9, 取締役会の実効性評価に際して、評価方法や評価結果の活用の見直しに関して、社外取締役としてどのように取締役会全体に働きかけるべきか。
10, 機関投資家から社外取締役として指名され、対話機会を求められた。どのような観点からコメントを考え、振る舞うべきか。
11, アクティビストファンドから事業に関する提案レターを会社が受領した。社外取締役としてどのように捉え、どのように対応すべきか。
12, 会計不正や品質問題等の不祥事が発覚した場合、社外取締役としてどのように対応するべきか。また、不祥事の発生防止のため、社外取締役としてどのように経営の監督を担うべきか。

各ケースでは、想定企業の業種や事業内容、収益など詳細に設定した。業界の動向なども踏まえて対応するために社外取締役に求められる知見を掲載した。

社外取締役の質向上がコーポレートガバナンス改革のカギ

経産省では合わせて、社外取締役向けの研修・トレーニングの活用に関する補足資料も公表した。社外取締役向けの研修を有効に行うための8つのポイントを紹介した。

2022年7月に改訂した「コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針(CGSガイドライン)」では、経営陣の「執行機能の強化」と、経営陣を規律する「ガバナンスの強化」を促した。

社外取締役の質の向上はコーポレートガバナンス改革のカギだ。経産省では、「研修コンテンツの充実化」を今後の検討課題と位置付けている。

社外取締役向け研修・トレーニングの活用の8つのポイント
社外取締役向けケーススタディ集

M.Ikeda

池田 真隆 (オルタナS編集長)

株式会社オルタナ取締役、オルタナS編集長 1989年東京都生まれ。立教大学文学部卒業。 環境省「中小企業の環境経営のあり方検討会」委員、農林水産省「2027年国際園芸博覧会政府出展検討会」委員、「エコアクション21」オブザイヤー審査員、社会福祉HERO’S TOKYO 最終審査員、Jリーグ「シャレン!」審査委員など。

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キーワード: #ガバナンス

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