食品ロス削減の普及イベント「mottECO(モッテコ)FESTA 2023」がこのほど、ホテルメトロポリタン エドモント(東京・千代田)で開かれた。約30社・団体が出展し、約300人が参加した。講演した日比絵里子・国際連合食糧農業機関(FAO)駐日連絡事務所所長は、「食品ロスは、生産地の資源を無駄にするだけではなく、廃棄に伴いCO2を排出する。そうした複数の影響を意識することが重要だ」と話した。(オルタナ副編集長=吉田広子)
本来食べられるのに捨てられてしまう食品を「食品ロス」と呼ぶ。
世界では食料生産量の3分の1に当たる約13億トンもの食料が毎年廃棄されている。日本の食品ロスは、年間523万トンに上り、毎日、大型トラック(10トン車)約1433台分の食品を廃棄していることになる(出典:農林水産省及び環境省「令和3年度推計」)。
一方、FAOなど国連機関が7月12日に発表した報告書「2023年 世界の食料安全保障と栄養の現状(SOFI)」によると、2022 年の世界の飢餓人口は6億9100万人から7億8300 万人と推定された。中間の7億3500万人を基準にすると、2019年と比べて1億2200万人増加した。
先進国では余った食品が捨てられ、開発途上国では飢餓人口が増えている。こうした「食の不均衡」は世界的な問題だ。
日本では、2019年10月に食品ロスの削減の推進に関する法律が施行し、食品メーカーや小売り事業者、外食産業、生活者などがそれぞれの立場で食品ロス削減に取り組んできた。
こうした日本での食品ロス削減は、世界の食料問題にどのように影響を与えるのか。
日比FAO駐日連絡事務所所長は、「日本で食品ロス削減の努力をしたからといって、すぐに食料が増えて、飢餓人口が減るわけではない」と説明する。
しかし、「日本の食料自給率は低く、多くの食料をはるか遠く離れたところから輸入している。その土地の水や資源を消費し、自然を壊しているかもしれない。そうして日本に運ばれた食品を無駄にすることは、廃棄に伴うCO2を排出する。つまり、二重、三重の負荷があるということ。グローバルな視点で、食料や農業の持続可能性を考えなければいけない」と続けた。
FAO日本担当親善大使を務める、中村勝宏・ホテルエドモント統括名誉総料理長は、「日本はいま『飽食の時代』だ。一方で、世界には飢餓で大変な思いをしている人がいる。そうした事実を知ったうえで、自分たちの食生活を考えなければならない。私は料理人の立場として、食品ロス削減に取り組んでいきたい」と語った。
「mottECO(モッテコ)FESTA 2023」は、日本ホテルなど6社と東京都杉並区が主催。環境省や消費者庁など4省庁、自治体、外食・食品産業、ホテル業、大学など約30社・団体が出展した。
日本ホテル、帝国ホテル、京王プラザホテル、浅草ビューホテル、JTBは、来場者に、食品ロス削減につながるメニューを振舞った。