東京電力の株主総会で、「原発から撤退すれば英断」と訴え

原子力発電からの撤退と自然エネルギーの拡大を

東京電力の株主総会に参加するグリーンピースのスタッフ
(2023年6月28日、東京都江東区有明・東京ガーデンシアター)

6月28日、株主として、第99回東京電力・定時株主総会に参加しました。

総会では2時間半ほど質疑が行われ、ALPS処理水(=汚染水)海洋放出の中止や、原子力事業から撤退を求める提案など、すべての株主提案が否決されました。

東電株主総会の様子をお伝えします。

開始時刻前から、会場の東京ガーデンシアターの外では、脱原発を訴える人々が「脱原発提案に賛同しましょう」と株主に向けてアピールをしていました。

 わたしは、株主の招集通知を持って会場内に入り、「株主提案席」に座ります。

総会が始まると、ステージ上に20名ほどの取締役ら役員が登壇し、中央には、総会の議長を務める小林喜光取締役会長、その左に小早川智明代表執行役社長が着席しました。

冒頭で東電は、映像を使った事業報告と今後の取り組みなどを説明します。そして、最初に会社側からの提案があり、取締役13名選任が提案されました。

 続いて、株主側からの提案の審議に移り、第2号~第11号議案について、株主が補足説明をおこないます。 ここでは、原子力発電からの撤退、石炭火力の即時廃止、自然エネルギーへのシフト、蓄電・蓄熱技術の積極的導入、「ALPS処理水」(汚染水)の海洋放出中止などが株主から提案されました。  

グリーンピースから東電への提案

グリーンピースは、東電株主総会において、まず、原発を温暖化対策として位置付けず、活用しないことを提案し、地球温暖化、気候変動が激化し、暴風雨や干ばつなど、これ以上の気候危機を避けるためには、2030年までの残り6年半で温室効果ガスをいかに削減できるかが重要であることを訴えました。CO2削減を原発に頼ることで、省エネの促進と自然エネルギーの拡大という最も有効な政策をますます遅らせてしまうことになるからです。

続けて、そもそも、原発のCO2削減ポテンシャルが自然エネルギーの10分の1以下にすぎないこと、さらに原発は、定期点検での停止、老朽化や地震による事故、不祥事、裁判などで長期停止し、計画通り運転できないことが多くあり、停止時には火力発電を動かすことになり、温暖化の解決策にならないどころか助長してしまうという点を指摘しました。

グリーンピースからはさらにもう一点、現状、(東電管内では)原発がなくても電力をまかなうことができているという事実にもとづいて柏崎刈羽原発の再稼働に反対する提案を行いました。

昨今、頻発する地震により、原発の事故の可能性は高まっています。また、有事の際は、原発が攻撃を受ける危険性もあります。核燃料は全て輸入に頼っているため、我が国のエネルギー安全保障には寄与しません。

この点を明確にした上で、柏崎刈羽原発を再稼働せず、他の大手電力に先駆けて、日本で初めて原発から撤退すれば、それは世界からも英断であると称賛されるはずであると訴えました。

東電は「反対」と回答

これに対して東電取締役会は、

「資源の乏しい我が国においては、電力の安定供給や温室効果ガスの排出削減、経済性の観点から、再生可能エネルギーや原子力、火力などの各種電源をバランス良く構成する必要があると考えている」とした上で、

「国の『GX実現に向けた基本方針』において、原子力発電は、再生可能エネルギー発電と同様に、我が国のエネルギー安全保障に寄与する脱炭素効果の高い電源として位置づけられ、最大限活用することとされております。

原子力発電は、運転時に温室効果ガスの排出がないことに加え、優れた安定供給性と効率性を有するベースロード電源であることから、カーボンニュートラルの実現のために、安全性の確保を大前提として、今後も活用が必要であると考えております」

と回答しました。

化石燃料に替わる太陽光や風力発電を進めることが急務だ
(2019年、福島県南相馬市原町区 ©Ryohei Kataoka)

再生可能エネルギーはすでに安価で安全なエネルギー

株主からの株主提案について、東電側の回答や説明が終了したあと、出席株主は、手を挙げて指されれば質問や意見を言うことができます。

 グリーンピースは、意見を準備し、挙手し続けましたが、残念ながら今年は指名されませんでした。

グリーンピースからの東電への意見は以下の通りです。

  • 燃料費高騰に乗じて電気料金を値上げするのは、経営努力が足りない。
  • 東電福島第一原発の凍土壁や、本来は必要のない処理水の海洋放出に多額の資金を使い、日本原電に資金を提供するなど、無駄な投資が多い。
  • 自然エネルギーはもはや原子力よりコストがかからない電源であり、しかも、原子力は脱炭素にはならないので、原子力への投資をやめるべきである。

指名された株主からは、「2022年度、東京電力エナジーパートナーが赤字となった原因は、発電量がゼロでも必要となる原発の維持管理などに年間で約4900億円負担しているためで、原発をやめれば電気料金は下がるのではないか」といった厳しい指摘もありました。

 一方で、「原発を再稼働した関西電力や九州電力は電気料金を値上げしておらず、東電も原発を再稼働することで値下げしてほしい」などと、再稼働を求める株主もいました。

 株主からの提案はすべて否決東電の小早川社長は、

「原発は天候に左右されない安定した電源で、燃料の調達先を多様化できるなど利点がある。原発は安全性の確保を大前提として、再稼働に向けて取り組んでいきたい」と、従来通りの答弁を繰り返すにとどまりました。

しかし、その大前提の「安全性の確保」ができないのが原発です。原発は地震に対して脆弱であり、テロに対しての対策をとることが困難であることも昨今注目を浴びています。

最後に採決がおこなわれ、会社提案の第1号議案のみ可決、株主による第2号から第11号議案は全て否決されました。

そして、経営陣が退席し、株主総会は閉会しました。東電役員、経営陣の耳に、グリーンピースはじめ、株主からの要望や意見はどのように聞こえたのでしょうか。

すでに再生可能エネルギーは、安価で安全なエネルギー源となっています。グリーンピースは、東京電力に対して、脱原発と脱化石燃料、自然エネルギーの大幅な推進を求めています。

greenpeacejapan

国際環境NGOグリーンピース・ジャパン

グリーンピースは、世界規模の環境問題に取り組む国際環境NGOです。問題意識を共有し、社会を共に変えるため、政府や企業から資金援助を受けずに独立したキャンペーン活動を展開しています。本部はオランダにあり、世界55カ以上の国と地域で活動し、国内だけでは解決が難しい地球規模で起こる環境問題に、グローバルで連携して取り組んでいます。執筆記事一覧

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キーワード: #脱炭素

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