実写『リトル・マーメイド』トリトン王役と海洋保護

好調なオープニングで世界を沸かせているディズニーのファンタジー・ミュージカル『リトル・マーメイド』。もうご覧になりましたか? 素晴らしいアリエルや美しい海中描写、ユニークなキャラクターなどたくさんの見どころがある本作ですが、今日はあまり知られていない『リトル・マーメイド』が持つメッセージを紹介します。トリトン王を演じたハビエル・バルデムの環境活動家としての一面にフォーカスしながら、そのメッセージをひもといてみましょう。

■『リトル・マーメイド』劇場公開、絶好調のオープニング

2023年6月9日より劇場公開されているディズニーのファンタジー・ミュージカルの実写映画『リトル・マーメイド』。

人間の世界を知ろうとする人魚、アリエルが繰り広げる恋と冒険の物語である本作。興行収入も好調で、日本では初登場第1位から3週連続で1位をキープし、公開3日間の興行収入7億1,180万円を記録*、日本に先駆けて現地時間の5月26日に公開となった全米では、初日の金曜を含めた3日間の興行収入が約9,550万ドル(約133億円)となり、実写版『アラジン』を超える滑り出しとなりました。

ケンブリッジでの南極保護イベントに参加するオスカー俳優のハビエル・バルデム。イギリス(2018年7月)

トリトン王を演じるのは、オスカーを受賞した『ノーカントリー』始め、日本でも大ヒットした『パイレーツ・オブ・カリビアン 最後の海賊』や『007 スカイフォール』など多くの作品に出演する俳優ハビエル・バルデムです。

■『リトル・マーメイド』に加わった「海のため」のシーン

ハビエル・バルデムがトリトン王として『リトル・マーメイド』に出演するにあたって、映画には当初ある変更が加えられていました。それがどのような変化だったかを知るためには、バルデムの環境活動家としての側面に触れる必要があります。バルデムはこれまで、世界的な映画スターとしての知名度を効果的に使い、特に海洋保護に関連する活動を多く続けてきています。

海洋保護条約の締結のために、ニューヨークのタイムズスクエアでグリーンピースのバナーを掲げ、スピーチを行うスペインの俳優ハビエル・バルデム。アメリカ。(2019年8月)

2019年8月、国連で、海洋保護条約の合意に向けての交渉が続く中、バルデムはニューヨークのタイムズスクエアに立ち、海の保護を訴えました。グリーンピースのバナーを掲げ、海を守るよう訴えた彼のスピーチは胸に迫るものでした。

トリトン王とハビエル・バルデムの共通点

「海とそこに住む住民に国境はありません。公海で起こることはすべてに影響します。クジラ、カメ、魚は国境を持ちません。彼らはみな互いにつながっており、私たちも彼らとつながっています」

ニューヨークのタイムズスクエアで行われたバルデムのスピーチは、まるでトリトン王の言葉のように聞こえます。まだ、『リトル・マーメイド』の撮影も行われていなかった頃から、彼は海に住むいきものたちのことを考え続けていました。

バルデムがリトル・マーメイドという作品を観ることになる多くの子どもたち、そして大人たちに届けたかったのは、海と海のいきものからのメッセージです。

グリーンピースの船で南極のキングジョージ島を訪れたハビエル・バルデム。ヒゲペンギンにご挨拶。(2018年1月)

海を守ろうというメッセージのためにバルデムはグリーンピースと協力して、ロブ・マーシャル監督に映画にあるシーンを追加するようかけあいました。実際に撮影されることになった、新しいシーンとは、「トリトン王が海を掃除しながら、人間が海を汚すことを嘆いている」というもの。

最終的にこのシーンは撮影はされたものの本編からはカットされ、劇場公開中の映画本編では観ることができません。しかし、ディズニーのプロデューサーがいずれこのシーンを私たちのもとに何らかの方法で届けることを約束していますので、楽しみに待つことにしましょう。

ハビエル・バルデムとグリーンピースの活動の軌跡

バルデムがグリーンピースとともに行った海のための活動を振り返ってみます。

グローバルキャンペーン『南極にサンクチュアリを』
2018年の1月にこのキャンペーンは、南極にサンクチュアリ(保護区)をつくるためにスタートしました。

潜水艇に乗り込み、ゲルラッハ海峡沖、水深約270メートルの南極海底探査に出発しようとするハビエル・バルデム。(2018年1月)

バルデムはグリーンピースの南極ツアーに、『ストレンジャー・シングス 未知の世界』出演のデヴィッド・ハーバー(ホッパー署長役)、南極探検家のワン・ユハンなどと一緒に参加。

南極の海底探索に出かけようとする俳優のハビエル・バルデムと、グリーンピース・アメリカの潜水艇パイロットのジョン・ホセバー。(2018年1月)

調査船で南極海底を探索し、南極海に広く保護区を設置するように呼びかけました*

オーシャンアンバサダー就任

2019年には、グリーンピースの海洋保護条約の締結を求め、世界の海に海洋保護区を設置する構想に賛同し、多くの著名人とともに「オーシャンアンバサダー」に就任*。このキャンペーンには世界から約500万人以上の人々の署名が寄せられ、海洋保護条約はその後、2023年3月に合意、6月についに締結され、海を守るために動き出そうとしています。

リトル・マーメイドとともに美しい海のために

トリトン王として映画に出演しているハビエル・バルデムはグリーンピースにとって、素晴らしい海の大使(オーシャンアンバサダー)です。

グリーンピースの船、アークティック・サンライズ号に乗船し、南極に滞在中のハビエル・バルデム。船の窓には氷山が映る。(2018年1月)

「人は水を汚し、サンゴを破壊する。調和というものを考えていない」。これは作中のトリトン王の台詞。変化が必要です。

私たちは映画『リトル・マーメイド』を観て、どんなメッセージを受け取るでしょうか。まだ映画を観ていない人はぜひこの力強く感動的な作品を劇場でご覧になってください。映画の感動を海の汚染をなくすための力に変えて、一緒に海と海のいきものたちを守るためにアクションしましょう!

greenpeacejapan

国際環境NGOグリーンピース・ジャパン

グリーンピースは、世界規模の環境問題に取り組む国際環境NGOです。問題意識を共有し、社会を共に変えるため、政府や企業から資金援助を受けずに独立したキャンペーン活動を展開しています。本部はオランダにあり、世界55カ以上の国と地域で活動し、国内だけでは解決が難しい地球規模で起こる環境問題に、グローバルで連携して取り組んでいます。執筆記事一覧

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キーワード: #生物多様性

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