木造ビルでコスト減と脱炭素を両立、法改正で高層も視野に

記事のポイント


  1. 木造ビルがコスト減と脱炭素の観点で注目を集めている
  2. さいたま市内に建設する木造ビルは建築コストを3分の2、CO₂排出量は半分に
  3. 木造高層ビルを想定した法改正も進む

木造ビルがコスト減と脱炭素で注目を集めている。「アキュラホーム」のブランドで注文住宅を手掛けるAQ Group(東京・新宿)はさいたま市内に木造ビルを建設する。これまでの木造ビルに比べてコストを3分の2に抑えた。建設時のCO₂排出量は従来のビルに比べて2分の1以下になる。木造高層ビルを想定した法改正も進む。(オルタナ編集部・萩原 哲郎)

AQ Groupはさいたま市内に8階建ての純木造ビルを建築する

木造ビルへの注目度が高まっている。

大林組は2022年3月に高層純木造ビル「Port Plus」を横浜市内に建築した。11階建て、高さ44mは純木造耐火建築物としては国内最高だ。

一部を木造にした開発計画も複数立ち上がっている。三井不動産と竹中工務店が東京・日本橋で共同で進めるビル建設計画では、木造と鉄骨造のハイブリッドを採用する。

東京海上HDグループが東京・丸の内で予定する本店建て替え計画も一部木造だ。

■住宅建築の工法でコスト抑えた普及型を提示へ

デベロッパーやゼネコンが木造ビルの可能性を探るなかで、建築コストも考慮した「普及型」を示す企業も現れた。注文住宅を手掛けるAQ Groupだ。

同社は、さいたま市内で8階建ての新本社ビルを建設中だ。完成は24年度を予定する。他の木造ビルに比べて建設コストは3分の2以下に抑えたという。従来のビルに比べると、建設時のCO₂排出量は2分の1以下だ。解体時のCO₂も従来のビル解体に比べて抑えられる。

同社がこのビルを「普及型純木造ビル」と打ち出すポイントは、住宅建設で一般的な工法などを採用していることだ。工務店などでも対応しやすくなる。

「普及型」の登場は木造ビルを広げる機会になりうる。同社広報担当者は「普及型を展開していくためにも、まずは木造ビルに対する規制の見直しなどについてアプローチしていきたい」と話した。

■木造ビル普及へ地ならしが進む

木造ビル普及のハードルは何か。

建物の確認検査業務を行う確認サービス(名古屋市)顧問の佐藤廣志氏は「建築基準法では、木造であることで何階建てまでという規制はない」と話す。

最大のハードルは耐火性だ。「木造は鉄骨造や鉄筋コンクリート造などと比べて、材自体が燃やすく、耐火制限上非常に不利。耐震性や耐久性の面でも課題が多くある」。

しかし、木造ビルの普及に向けた変化も起きている。竹中工務店は昨年11月に3時間耐火の「燃エンウッド」を開発した。国も木材利用を重点施策にしており、「近年の法改正は、木造高層ビルを想定した内容になっている」(佐藤氏)。

木造ビルの普及に向けて地ならしが進む。

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萩原 哲郎(オルタナ編集部)

2014年から不動産業界専門新聞の記者職に従事。2022年オルタナ編集部に。

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キーワード: #脱炭素

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