伊藤園や京急など続々とアップサイクル、茶殻や電車を素材に

記事のポイント


  1. 伊藤園や京急電鉄が本業の廃棄物のアップサイクルに取り組む
  2. 京急は日本で初めてリノベーションに廃棄電車の部品を活用した
  3. 調査会社「アップサイクルはサステナ商品市場の成長力の1つに」

伊藤園や京浜急行電鉄が本業から出てくる廃棄物のアップサイクルに取り組む。京急は日本で初めて、マンションのリノベーションの資材に廃棄する電車の部品を活用した。こういったアップサイクルは、サステナ商品市場の成長力にもなりそうだ。(オルタナ編集部・萩原 哲郎)

伊藤園の茶殻リサイクルで開発した「茶殻配合軽量パネル」で電費向上を実現

「アップサイクル」への注目度が増している。

英ケンブリッジ辞書は2019年の「ワード・オブ・ザ・イヤー」に「upcycling」を選出した。オンライン辞書にこの言葉が加わったのは2011年12月だ。検索回数は2019年時点で181%増になったという。

その背景について「言葉のなかにある、ポジティブな考え方に共鳴した」との見立てを示している。この「アップサイクル」は成長を続けている。

たとえばアップサイクルした食品の市場規模は、米調査会社・アライドマーケットリサーチの調査によれば、21年に537億ドル(約7兆9000億円)の市場規模が31年までに970億ドル(約14兆2500億円)まで成長するという。

■本業から出る廃棄物も、京急は電車をリノベ

日本企業もアップサイクルに取り組む企業は年々増えている。そのなかで、本業から出る廃棄物を生かしたアップサイクルに取り組み、「らしさ」を出す企業も増えている。

京浜急行電鉄は2024年2月に販売を開始予定のリノベーション分譲マンション「プライムフィット横浜富岡」で、廃棄する鉄道車両の部品を活用した。車両の座席を共用部の集会スペースやワークスペースのソファに利活用したり、網棚を飾り棚にしたりした。

すまい事業部の齋藤健介氏によれば、今回の取り組みを行った理由については「環境に対する課題と鉄道会社の個性をどのように出していくかという2つの課題があった」と話す。廃棄予定の鉄道車両の部品を使うことで、この2つの課題に応えた。

今後も同様の取り組みを「積極的に検討していきたい」とした。

■伊藤園は茶殻を活用してEVを軽量化

伊藤園は茶殻リサイクルに2000年から取り組む。年間で5800トンの茶殻を排出する。これらはすべてリサイクルされていて、アップサイクルしている量も数%になるという。

茶殻を配合した軽量パネルを搭載した「EVボトルカー」を10月から順次導入する。

ボトルカーは飲料製品などを積載する営業車のことだ。同社はボトルカーを含めて約3350台の車両を使用する。「EVボトルカー」の荷室のスライドドアやバックドアに茶殻をアップサイクルした「茶殻配合軽量パネル」を使用する。

茶殻配合軽量パネルを使用することで、最大で110kgの軽量化が可能となる。これによって、電気自動車の燃費である「電費」向上につながる。同社では10月から導入し、23年度内に都内の営業拠点に30台展開する計画だ。

外部への展開について聞くと「まずは自社で導入し、2030年度に全車両中の電動車使用比率を50%にするという目標の実現を目指す」とする。ただ外部から要望があれば、「前向きに検討したい」ともした。

■1台のテーブルに約2750本の竹割り箸を活用

TerrUPは竹割り箸をアップサイクルしてテーブルを開発

使用済みの竹割り箸を活用したアップサイクルテーブルを開発したのは、TerrUP(京都市)だ。竹割り箸の98%は海外からの輸入品だ。同社によれば、「年間約43億膳が廃棄」されているという。これまで使用後の再利用やリサイクルが難しく、ほとんどが廃棄されてきた。

同社は、この竹割り箸をアップサイクルして、テーブル「TAKEZEN TABLE」を開発。サイズが奥行600㎜、幅1000㎜のテーブルで、約2750本の竹割り箸を使っているという。

使用済みのため、汚れも気になる。村上勇一代表は「汚れに関しては海苔などの付着物があれば、ブラシで落としているが、竹割り箸を使用するのが和食の飲食店が多く汚れがひどいケースは少ないという印象」と話す。

さらに「商品の製造工程で割り箸の接着密度を高めるために100℃のいオーブンで1時間ほど保管するという工程がある」という。熱処理の代わりとなっている。

■アップサイクルはサステナ商品市場の成長のカギに

こういったアップサイクル商品は食品やファッションなど幅広い業界の企業が試行錯誤する。こうした商品がサステナ商品市場の成長のカギを握っている。

インドの調査会社、マキシマイズ・マーケット・リサーチは、サステナブルファッションの市場レポートのなかで、アップサイクルや修理などのトレンドが「サステナブルファッションの市場規模の成長を押し上げる」としている。

日本でもアップサイクル商品開発事例は増加している。直近事例を下記にまとめた。

■雪印メグミルク: 海洋プラスチックを配合したプラスチックパレットを導入した。これまでも、破損や老朽化したパレットやクレート(かご)をリサイクルしてきたが、海洋プラを配合することで更なる資源循環に取り組む

■三菱食品: 九州支社の地域創生の取り組みで、ごぼうの端材をアップサイクルして「ごぼうを食べる 国産ごぼうのメンチカツ」を開発。さきがきや千切りをする際に、先端約20㎝の活用に苦慮し、廃棄されていた。先端も使用し、廃棄ロスにつなげる。

■味の素AGF: モリリン(東京・中央)と三陽商会が展開するサステナファッションブランド「ECOALF」と協業し、コーヒー豆・粉を活用したコーヒー染めの限定商品を販売する。AGFで生じた通常廃棄となるコーヒー粉や、都内の焙煎店から発生する品質規格外のコーヒー豆を合わせて、コーヒー染料にし、モリリンの協力を得てサコッシュを制作した。

■オリス: 社会貢献活動支援モデルシリーズのひとつとして、ゴーストネット(廃漁網)をアップサイクルした文字盤のダイバーズウォッチ「オリス×ブレスネット」を発売した。ダイアル(文字盤)は漁網の切れ端を加工して作っていて、漁網の切れ端以外何も添加していない。

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萩原 哲郎(オルタナ編集部)

2014年から不動産業界専門新聞の記者職に従事。2022年オルタナ編集部に。

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キーワード: #リサイクル

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