花王やキリン、人事評価にサステナ要素組み込む企業相次ぐ

記事のポイント


  1. 社員の人事評価に非財務指標を組み込む企業が相次ぐ
  2. 花王やキリン、カルビー、三井住友FGなどだ 
  3. 経営戦略にサステナを組み入れたことで、事業として課題解決に取り組む

役員報酬にESG目標を連動する動きは増えてきたが、社員の人事評価にも非財務に関する指標を組み入れるようになってきた。花王やキリン、カルビーなどが人事評価の項目にサステナビリティを取り入れた。経営戦略としてサステナ要素を重要視し、事業活動で社会課題の解決を進められる人材を増やす狙いがあるようだ。(オルタナS編集長=池田 真隆)

IBMとオックスフォード・エコノミクスは6月末、世界30カ国、24業種のCEO3千人を対象にした調査レポートを公表した。そのレポートでは、役員報酬をESG目標の達成率と連動していると答えたCEOは50%だった。昨年の調査では、15%だったが、わずか1年で急増した。

近年では、役員だけでなく、社員の評価項目にも非財務指標を入れる動きが相次ぐ。

花王では、2021年から社員が自ら目標を設定し、それらを指標とした個人の実績評価に一定程度連動する「組織活性化制度」を導入した。実績だけでなくプロセスも評価に含める。同社の社員は、自らが掲げる目標のうち3割をESG関連で設定する。

三井住友フィナンシャルグループは、今年度から社員の「貢献評価」に「社会的価値の創造」を加えた。貧困や環境、少子高齢化などに対する取り組みを評価する。貢献評価は自社や周囲の社員への貢献度合いから評価する。同社には成果に対する達成度合いなどを測る「実力評価」もあり、この2つの評価制度で人事評価を行う。

キリンホールディングスは2019年に「CSVコミットメント」を策定した。経営理念をもとに定めた「CSVパーパス」を実現するため、中長期的な視点で各事業に求めるKPIを数値化したものだ。「環境」「コミュニティ」「健康」「酒類メーカーとしての責任」の4領域で、グループ内の事業会社や部門ごとに中長期目標を数値化した。個人目標として落とし込む社員もいる。

富士フイルムは、非財務指標を従業員の人事評価の中にも組み込む。従業員は年1回、環境方針や健康経営への理解とそれに沿った行動や、コンプライアンスの遵守について自己評価し、その結果は、翌年の昇給の算定に影響する。

Sansan、社員同士の「称讃」を給与に

Sansanは社員が「褒め合う」制度を導入した。社員に「称讃ポイント」の持ち点を付与し、持ち点の範囲内で他の社員に称賛ポイントを送る仕組みだ。ポイントは金額換算し、給与に反映する。ポイントの利用率を中期的なKPIにもした。

カルビーは2019年に「全員活躍」「圧倒的当事者意識」を掲げ、社員に求める価値観「Calbee 5 values」(自発/利他/対話/好奇心/挑戦)を定めた。同社が重要視する5つの価値観の中には、サステナビリティ要素が強い「利他」もある。全社員は5つの価値観をもとに改善計画を定める。改善の有無を含めて、評価基準に照らして評価する。

米マスターカードは2022年、全世界3万人の従業員の賞与評価にESG目標を組み込んだ。同社はESG目標のなかで、特に炭素削減、金融包摂、男女間の公正な賃金の平等に焦点を当てる。これらの目標の達成度合いに応じて、ボーナス水準を10%ほど増減する。

M.Ikeda

池田 真隆 (オルタナS編集長)

株式会社オルタナ取締役、オルタナS編集長 1989年東京都生まれ。立教大学文学部卒業。 環境省「中小企業の環境経営のあり方検討会」委員、農林水産省「2027年国際園芸博覧会政府出展検討会」委員、「エコアクション21」オブザイヤー審査員、社会福祉HERO’S TOKYO 最終審査員、Jリーグ「シャレン!」審査委員など。

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キーワード: #サステナビリティ

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