女性主体の「シャドー内閣」が日本にあれば

記事のポイント


  1. 「ジェンダー・ギャップ指数2023」で日本は125位と過去最低順位となった
  2. 日本のジェンダー・ギャップが世界と比べてどれほどかを受け止めるべきだ
  3. 日ごろからジェンダー・ギャップを肌で感じる女性の視点が必要になる

太古の昔、女性の王がこの国を支配したことはあっても、近代国家となってからは女性が首相に就いたことがない。2023年6月に発表された「ジェンダー・ギャップ指数2023」では、ついに世界146ヵ国中125位と過去最低順位となってしまった。(サステナ経営ストラテジスト・松田雅一)

「ジェンダー・ギャップ指数2023」で、日本は世界146ヵ国中125位だった

ジェンダー問題は順位を競うモノではないにせよ、日本社会のジェンダー・ギャップが世界と比べてどれほどなのか、政治や経済分野への女性の進出度合が指数に反映されていることをどう受け止めるかである。

日本社会が抱える様々な課題に対して、政治や経済がジェンダー・ギャップなく、正しく判断・機能しているのか。女性首相が誕生したとして、リーダーシップを発揮すれば、どのような社会の道筋が描けるのかは見てみたい。

もちろん、これまでの課題への取り組みにも女性の意見が反映されているはずではあるが、ジェンダー・ギャップが大きい、男尊女卑的思考の強い分野では、女性の意見が主流派であったとは考えにくい。

とりわけ日本の政治の分野においては、女性は数の上でも少数派であって、女性目線で日本社会を俯瞰し、課題解決に反映されてきたとは思えない。仮に、女性首相が誕生したら、社会の課題に対して異なる視点での発信がなされるだろう。

例えば、昨今の自衛隊や芸能プロダクションにおける性加害問題。特殊な社会の出来事として男性感覚では見過ごすところを、女性の眼からは一生を左右する重大な人権事案として捉え、被害者救済や法整備へ素早く政治が動くはずである。

同じく、夫婦別姓や同性婚の問題。世代間ギャップはあるとして、「社会が変わってしまう」と慎重姿勢を崩さない日本の今の姿勢は、世界の亜流となりつつある。LGBTQに至っては、理解を促進させる法律を成立させるだけで大騒ぎであった。

少なくとも、日ごろからジェンダー・ギャップを肌で感じる女性の眼からは、「社会が変わっていかなければ」と考えて、どうすれば社会の理解が進むのかを模索するだろう。

少子化対策の問題。総花的にいろいろな施設や手当の拡充をあげながらも遅々として進まないが、財源の問題も含めて、女性の眼からは何を優先するべきか、より明確なメッセージが聞けるのではないか。

二大政党を模索したある時期に、「シャドー内閣」なるものもあったが、政党や党派に拘らず、民間女性も起用して女性を総理とする女性主体のシャドー内閣が、社会の課題に対してどのような発信をするのか、この際、試してみてはどうだろうか。

日本国内に限らず、国連や世界で活躍する日本人女性も多く、そうした英知を集め、グローバルスタンダードを意識し、圧力団体への忖度や既得権益を排除して、未来創造型で日本社会を俯瞰することが今の日本には必要だ。

今こそ、女性が総理大臣となって日本社会を俯瞰するときかもしれない。様々な社会の課題に対して、もっと異なるメッセージが発信されるようになれば、日本のジェンダー・ギャップ指数も飛躍的に改善するはずである。

筆者紹介: 松田雅一(まつだ・まさかず) 
略歴  静岡大学法学科卒業、東レエンジニアリング株式会社入社、海外関係
会社(韓国)の社長を4年間歴任後、同社取締役、常務取締役を担当。
2020年3月第1回サステナ経営検定1級合格(サステナ経営ストラテジスト)
2022年6月役員退任(専務理事)

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キーワード: #ビジネスと人権

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