「赤いリンゴ」をどう守るか、「青い地球」は誰が守るか

記事のポイント


  1. 2023年の夏の猛暑により、リンゴが変色し腐るといった深刻な打撃を受けた
  2. 地球も、気候変動による森林火災や干ばつ、洪水による災害が頻発している
  3. 「沸騰化」「地獄の扉」の警鐘に耳を傾けなければならない

2023年の夏の猛暑・強すぎる日差しは、リンゴの「日焼け」-果実の表面温度が高すぎて変色し腐る-を起こし、深刻な打撃を与えているという。リンゴと同じく、地球もまた「日焼け」を起こして、今や深刻な打撃を受けている事態にある。(サステナ経営ストラテジスト・松田 雅一)

2023年の夏の猛暑により、リンゴが変色し腐るといった深刻な打撃を受けた

国連のグテーレス事務総長は、今年の8月『地球沸騰化の時代が来た』と警告した。9月には『地獄の扉を開けた』とも発言し、警鐘を鳴らし続ける。残念ながら、自国第一主義に邁進する昨今の世界の政治家の耳に、警鐘は響くのだろうか。

地球上の各地で、気候変動による森林火災や干ばつ、洪水による災害が頻発している。特に、生態系への影響は深刻で、こうした顕著な地球環境の変化は、人類が引き起こした、「アントロポセン=人新世の時代」と言われる所以である。

気候変動にもかかわらず、石炭・石油や鉱物資源、砂などの地球の資源を掘り、使い尽くす状況は、あたかも人類がリンゴを丸かじりするがごとく、地球の北端、南端にあたる、リンゴの芯の上下に赤い部分を僅かに残した姿を連想させる。

今世紀中には、気候変動の影響により地球上で住める場所は北端と南端になることを想定し、「ノマド・センチュリー(NOMAD CENTURY、気候崩壊後の人類大移動)」は、10億人規模の移住を想定した地球の近未来にどう対応すべきかを考察している。

通常、人は現在の延長線上で未来を考え、悲喜交々に今を生きているが、地獄の扉が開いたこれから先の未来が、まずは地球のどこでどうやって生きていくかを考えなければならないとすれば、誰しも立ち止まって扉の閉め方を考えるだろう。

何しろ、地球上の住めなくなる土地が国境を越えて拡大し、食料は不足し、地価が上がろうが、賃金が上がろうが、蓄財がどれだけあっても、様々な経済活動に関わって手にした今までの「価値」がゼロになることを意味するからである。

改めて、リンゴの日焼けをどう止めるのか、表面温度を上げないためにリンゴに資材を被覆することで表面温度の上昇を抑え、軽減はできるようだ。では、地球はどうか。

全世界が立ち止まって自国第一主義を脱却し、地球レベルで持続可能な社会を残す施策を実行するしかない。

米環境活動家のポール・ホーケンは2017年、190人の研究者、科学者のグループの協力を得て、地球温暖化を逆転させる100の科学的方法を記した書籍「ドローダウン」(著)を出版した。

今後は国連が、あるいは国連に変わる強力な善意の指導者が、実行に向けて働きかけていく必要がある。

古代ローマ社会がよろしく、日々のパンとサーカスに満足している間に、リンゴも地球も日焼けで腐ってしまう。我々みんなが、もっと真剣に地球に起こっている事態を注視して、「沸騰化」「地獄の扉」の警鐘に耳を傾けなければならない。

筆者紹介: 松田雅一(まつだ・まさかず) 
略歴  静岡大学法学科卒業、東レエンジニアリング株式会社入社、海外関係
会社(韓国)の社長を4年間歴任後、同社取締役、常務取締役を担当。
2020年3月第1回サステナ経営検定1級合格(サステナ経営ストラテジスト)
2022年6月役員退任(専務理事)

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キーワード: #脱炭素

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