雑誌オルタナ74号(2023年9月28日発行)の「フェアトレードトピックス」を紹介します。
■認証コーヒー、「社内浸透」にも
日本で初めてオフィスコーヒーサービスを開始した企業でもある業界大手ダイオーズが、7月に初めてフェアトレード認証コーヒーを発売した。全国のオフィス向け有機JASとのダブル認証の豆で、高品質で知られるイルガチェフェ銘柄だ。顧客企業から「会社の方針で認証コーヒーを使いたい」などの問合せが多かったことを受け導入したという。

近年、オフィスコーヒーをフェアトレードに転換する動きが増えている。大日本印刷や三井住友銀行などの大手企業からGMOやグリーなどのメガベンチャーまで、様々な企業・業種が取り組む。ダイオーズの導入によりさらに加速しそうだ。
導入の決め手は社会的責任と社員教育の2点だ。オフィスコーヒーなどの間接材も企業が配慮すべきサプライチェーンに勿論含まれる。
社員に自社のサステナビリティ方針を浸透させる上でも、方針を体現する場を身近な社内につくることは有効だ。
■「開発協力大綱」、8年ぶりの改定
政府開発援助(ODA)の基本方針を定めた「開発協力大綱」が8年ぶりに6月に改定され、2023年度は5709億円にとどまった。日本のODA予算は1997年度の1兆1687億円をピークとして減少を続ける。
大幅な方針転換はないものの、新しい時代の「人間の安全保障」や民間企業含めた多様な連携、包括的で公正な開発などを強調した。
相手国の要請を待たずに日本から事業を提案する「オファー型支援」が打ち出されたことも新しい。
企業を含めた開発の担い手が自らの強みを生かした協力を提案することで、日本ならではの援助を探る。
一方で途上国側のニーズと乖離した支援に繋がるリスクも指摘されており、今後開発に関わる企業は留意が必要だ。民間の力も活用して日本の貢献拡大に期待したい。
■カスケード型研修、生産者の知識養う
カカオの主要産地であるガーナ、コートジボワールではフェアトレードの支援を通して、カカオ小規模生産者に行うトレーニングプロジェクト(WACP)を7年に渡り展開している。
内容は、児童労働の防止、気候変動対応、GAP取組、貯蓄と金融、マネジメントシステムなど多岐に及ぶ。2022年には前年比75%増の約4万人の農家が研修を受け、知識や意識の向上が確認され、成功例として評価された。
成功要因は、「カスケード型トレーニング」と言われる、トレーナー育成への注力だ。22年の研修参加者のうち40%以上は、それ以前に研修を受けた仲間の農家から指導を受けた。
開発途上国での研修に限らず、あらゆる現場において、次なるトレーナー育成は施策成功のカギとして重要だ。