サステナビリティ(持続可能性)を経営に統合するプロセスは、サステナブル経営における「最重要課題」だ。すべての部署が事業におけるサステナビリティを理解しないと、思わぬ「リスク」が起きたり、「機会」を逸したりする。サステナ経営を社内に浸透させるためのメソッドをまとめた。(オルタナ編集長・森 摂、オルタナ編集部・吉田広子、池田真隆、萩原哲郎、下村つぐみ、北村佳代子)
なぜサステナ経営やESG(環境・社会・ガバナンス)が重要なのか、経営者は即答できるだろうか。ESGに取り組めば、自社の株価は上がるのか。上場していないなら、サステナ経営は不要なのだろ
うか。
サステナ経営の浸透において、トップダウンとボトムアップは両輪だ。ただし、「トップが言わなければ始まらない」とともに、「ミドルが助けなければ広がらない」。改めて、取締役ほか経営幹部の意識改革が不可欠だろう。
■「社会課題」を「自分ごと」化
では、企業トップはどうやってサステナ経営や社会課題の重要性を知るのだろうか。米ミシガン大学でビジネス倫理学を研究するデイブ・メイヤー教授らは、「道徳的な意義を強調し、企業のパーパス(存在意義)との関連性を示した方が、説得の成功率が高い」との調査結果を発表した(米ハーバート・ビジネスレビュー電子版2019年2月)。
これまで、環境・社会問題に企業が取り組むことの重要性について、経営陣の理解を得たい場合、多くの従業員は他社のベストプラクティスを示してきた。特に日本では、2011年以降、CSV(共通価値の創造)が急速に広がったことで、経済価値が強調されるようになった。
しかし、同教授ら研究チームは、社会変革を起こすには「力になりたい」という内発的動機が重要で、そのためにも道徳的な説得が有効だとした。「企業は社会課題を解決するための最良の組織だ。すべての従業員は職位にかかわらず、社会変革を起こす主体になれる」と主張する。
では、そうした「道徳性」は組織内でどのように養われるのか。キーワードは社会課題の「自分ごと」化だ。
■当事者の視点でまちを見直す
■サステナ経営は人的資本経営
■機会とリスクは「環境」以外にも
■サステナ経営は企業の風土改革