農業トピックス: コメでJ‐クレジットを創出

雑誌オルタナ74号(2023年9月28日発行)の「農業トピックス」を紹介します。

■水稲栽培でJ-クレジット創出

NTTコミュニケーションズとヤンマーマルシェが、生産者の新たな収益源となるJ‐クレジット創出に取り組む。ヤンマーマルシェが契約する一部の生産者が栽培するコメ「にじのきらめき」を対象に中干し期間の延長を行い、J‐クレジットの認証取得を目指す。

J‐クレジット制度運営委員会は3月に「水稲栽培による中干し期間の延長」を新たな方法論として承認した。水稲の中干し期間を通常より7日間延長することで、メタン発生量が3割削減できる。所定の審査を受けると、削減量分のクレジットの認証を受けることができる。

今回の取り組みでは、ヤンマーマルシェが営農支援や販売・流通支援を行い、NTTcomは地温や水位などのデータを取得するIoTセンサーやJ‐クレジット申請アプリの提供などを行う。

中干し期間を延長してメタン削減へ

■直営農場の有機転換を進める

イオングループの農業法人、イオンアグリ創造(千葉市)は2028年までに直営農場を有機農業に転換する。20ある直営農場のうち、養液栽培を行う埼玉久喜農場を除く19農場を有機に転換する。

イオン広報担当者は「21年度に経営方針に久喜農場を除いた全ての農場でのオーガニック栽培転換計画を盛り込み、23年度も継続して取り組んでいる」と話す。

16年に同社の埼玉日高農場で初めてとなる有機JAS認証を取得した。現在、認証を取得した農場は4農場にのぼる。

1つの農場を有機栽培に転換するには、3年ほど時間を要する見込みだ。広報担当者は「埼玉日高農場をモデルに、各地の気候や土の状態を考慮しながら水平展開していきたい」と話した。

イオングループでPB商品を企画開発するイオントップバリュでは有機食品の売上高を25年までに600億円を目指す。


■VRと遠隔操作で障がい者も農業に

東大発のベンチャー企業であるH2L(東京・港)は重度障がい者などが遠隔地にあるロボットを操作して農業参加できる新型システムの開発を進める。8月25日にはPwC財団の助成事業である2022年度秋季人間拡張(農福連携)の一環として、遠隔でイチゴ収穫を行う体験会を実施した。

遠隔での農業体験は、同社のVRシステムとアームハンド型コントローラを使用する。コントローラが腕の筋肉の動きを検出し、ロボットを操作する。

広報営業部の大久保千裕部長は「腕の動きや手のグーパーなどが遠隔地のロボットに動きが伝わる」と言い、「没入感や臨場感のある体験を共有できることが強み」だと話す。重度の障がい者などの就労機会の創出を目指す。


■農産物などの価格を適正に

 農林水産省は7月、農産物などの適正価格の形成を広報する「フェアプライスプロジェクト」を始めた。
 ロシアによるウクライナ侵攻などによる影響で、食品の原材料や生産資材、エネルギー価格が高騰した。食品の生産・流通コストが上昇し、農林水産業・食品産業は深刻な影響を受ける。
 総務省が公表する7月の消費者物価指数によれば、2020年を基準にすると、例えばさといもは80%、ほうれんそうは24.7%値上がりした。
 プロジェクトでは、特設サイトを開設して適正な価格形成への理解を促進していくとともに、持続可能な食料供給の実現を目指す。イベントなども開催する予定だ。

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萩原 哲郎(オルタナ編集部)

2014年から不動産業界専門新聞の記者職に従事。2022年オルタナ編集部に。

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キーワード: #農業

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