CSRトピックス: サステナ情報開示をクラウドで支援

雑誌オルタナ74号(2023年9月28日発行)の「CSRトピックス」を紹介します。

■サステナ情報開示をクラウドで支援

国際的なフレームワークにも対応

CCJ(東京・渋谷)は、企業のサステナビリティ情報開示の業務効率改善を図る「Sustaina Cloud」をリリースした。部署を横断した情報収集の一元化や、外部質問票への回答効率化機能など、開示における業務負担を減らしつつ、情報管理の強化する。

ここ数年で、国内外で類似のクラウドサービスが複数公開されており、欧州や日本で導入が進んでいる。これは、CSRD(企業サステナビリティ報告指令)やCSDDD(コーポレート・サステナビリティ・デューデリジェンス指令)への対応、有価証券報告書への記載など、非財務データの確実性が求められるようになってきているためだ。(CSR48・原理花子)


■コープさっぽろ、地域共助を促す

コープさっぽろの大見英明理事長(左)とミーツの成田智哉代表

生活協同組合コープさっぽろ(札幌市)は、「共助型困り事解決プラットフォーム」の企画運営を行うスタートアップ企業・ミーツ(厚真町)を関連会社化した。このサービスは少子化や高齢化などの問題を抱える地域で、住民の困り事をデジタル化によって可視化し、解決できうる住民をマッチングし、少額ながらも謝礼を支払うものだ。生活の「ついで」に地域の困り事を解決し、新たなつながりを生み出すコミュニティを目指す。

北海道全域で事業を展開するコープさっぽろの関連会社化により、現在は厚真町ののサービスを道内に広げ、地域全体の課題解決へつなげていく。(CSR48 黒井理恵)


■障がい者手帳がスマホアプリに

障がいをもつ当事者の心情に配慮

内閣府の令和5年版「障害者白書」で、ミライロのデジタル障がい者手帳「ミライロID」が紹介された。

従来の紙の障がい者手帳は、窓口で手帳を提示する際、周囲に障がい者であることが知られるなどの課題があった。デジタル障がい者手帳はスマートフォンを提示するだけなのでプライバシーが保たれ、オンライン事前決済でも障がい者割引を適用できるようになる。3月31日現在、本人確認書類として認めている自治体や事業者は3763団体。2024年4月から障がい者の法定雇用率が2.5%へ引き上げられる中、利用できる公共機関や商業施設がさらに増える予定だ。(CSR48・前田京子)

■食品6社、CO₂削減へ物流で連携

スコープ3の削減に向けて協働

食品メーカー6社(味の素、カゴメ、日清オイリオグループ、日清製粉ウェルナ、ハウス食品グループ本社、Mizkan)と物流企業のF-LINE(東京・中央)は、10月に北海道地区における物流を再構築する。同地区では2016年4月から共同配送を行ってきたが、今回は2カ所ある保管・配送拠点を1カ所に集約し、配送拠点と配送車両の共同利用をさらに進めることにより、CO₂排出量約16%の削減を見込む。

2024年問題や気候変動など物流における環境が厳しさを増していくなか、各社協働で取り組んでいくことにより、持続可能な物流体制を構築する。(CSR48・大井美歩)


■「マイクラ」で子どもにSDGs教育

今回のテーマは「すみ続けられるまち」

Minecraftカップ運営委員会は「教育版マインクラフト」を活用し、子どもたちのデジタルものづくりを応援する「Minecraftカップ」を開催する。

今年度で5回目となる同大会では、2024年2月の全国大会に向けて、全国13地区ブロックで地区大会予選・本選を実施する。子どもが主体となり、SDGs目標5、7、11の3つのテーマから1つ以上を選び、作品テーマに合わせてワールドを作り、大会に応募する。このイベントは、デジタルなものづくりを通じて「ひとりひとりが可能性に挑戦できる場所」を創出している。(CSR48・佐久間玲子)


■「デコ活」で暮らしの脱炭素を促す

環境省は7月13日、脱炭素に向けた新国民運動の愛称を「デコ活」と公表。二酸化炭素(CO₂)を減らす脱炭素(Decarbonization)とエコ(Eco)を組み合わせ、「前向きに活動する」という思いを込めた。

選考会メンバーの小池百合子東京都知事は「クールビズも当初は非常識と言われたが、今は常識となっている。個人の行動が気候変動につながっている今、アクションにつなげていきたい」と話した。今後、環境省は自治体や企業による協議会を発足し、脱炭素を実現する将来の豊かな暮らしを発信し、国・自治体・企業・団体などで共に国民・消費者の新しい暮らしを後押ししていく。(CSR48・大西香奈恵)


■総監督のつぶやき: 「グリーンハッシング」とは

筆者が審査員を務めた、早稲田大学ビジネスプランコンテスト。優勝はカーボンニュートラルに向けたサービス

企業が環境配慮をしているように装う、上辺だけのコミュニケーションは「グリーンウォッシング」と呼ばれますが、こうした批判を恐れて、企業が環境への取り組みについて発信することを辞めてしまう動きを「グリーンハッシング」といいます。

今後ますます消費者から企業へ向けられる目は厳しくなっていくのではないかと思った事例を紹介します。欧州で「good for the planet 〇〇」とパッケージに記載した商品に、その根拠が明確に表示されていないと消費者が訴え、企業が罰金を支払ったといいます。

この動きの背景には、消費者の環境や水リスク、アニマルウェルフェア、従業員の人権配慮などへの関心の高まりがあります。例えばZ世代が買いものをするときに、企業のサプライチェーンの透明性など、エシカルなメーカーかどうかを「Good On You」というサイトでチェックしてから購入するのだとか。これがスタンダードになっていくと、今後ますます詳細な情報開示が企業に求められます。

先日、CSR48メンバーで講義をした、早稲田大学の学生からのアンケートには「知名度も影響力もある企業が、サステナビリティに取り組むことで多くの人を巻き込むことが可能になる」というコメントがありました。リスクを恐れて情報を出さないのではなく、できていないことも正直に、その理由も併せて伝えることが、消費者の信頼を得る道なのだと思います。

「CSR48」は、企業のCSR担当者を中心に「CSRに関心のある女子たち」が集まったグループ。「CSRをもっと身近に」をミッションに、勉強会やイベントを実施する。⽬指すのはサステナブルな社会と、女性のエンパワーメントによって、利害や⽴場を超えて、より良い社会に向けたアクションをおこすこと。メンバーの所属は、商社、メーカー、ゼネコン、NPO法人などさまざま。 雑誌オルタナの連載の他、イベント登壇や4月はじまりのSDGsカレンダー発売など多彩に活動を広げる。オフィシャルブログ 執筆記事一覧

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