漁業トピックス: 欧州、漁船にもGPSを義務化へ

雑誌オルタナ74号(2023年9月28日発行)の「漁業トピックス」を紹介します。

欧州、漁船にもGPSを義務化へ

欧州議会の漁業委員会は2023年6月、IUU漁業の根絶に向け、EU漁業管理制度を見直すための法改正で合意した。改正される「EU漁業管理制度」では、5つの施策を新たに取り入れた。

① EU管理下のすべての漁船にGPS設置を義務化
② 全長18メートル以上の漁船へ船上監視カメラの設置を義務化
③ 漁獲を記録、報告するための電子システムの導入を義務化
④ サプライチェーン全体のデジタル・トレーサビリティの向上
⑤ EU加盟国内での漁業規制と罰則の統一化

国連食糧農業機関(FAO)の「世界漁業・養殖業白書2022」によると、乱獲された水産資源が回復すれば、1659万トンの漁業生産量の増加が見込めることが明らかになった。

海水温上昇でサバ減少に懸念

持続可能な漁業の国際規格を定める非営利団体MSC(海洋管理協議会)がこのほど、海水温上昇によるサバやニシンの減少に警鐘を鳴らした。海水温の上昇によってプランクトンが減少し、成長が難しいことが原因だ。

海上保安庁によると、日本周辺における8月の海水温は、平年より3℃以上高くなった
ところが絶えず存在した。海水温が異常に高い状態が5日以上続く海洋熱波も世界各国で頻繁に発生しており、米海洋大気局は9月までに海洋の50%が熱波に見舞われると予測した。

日本で消費される水産物は、輸入量が全体の5割弱を占め、多くを輸入に頼っている。タイセイヨウサバも焼サバや味噌煮などとして、日本の市場に多く出回る身近な魚だ。

水産資源の減少はすでに私たちの身近なところまで影響を及ぼしている。

食べて磯焼け対策三重県で始まる

「食」をきっかけに、海の課題を伝える日本財団のプロジェクト「海のごちそう地域モデル事業」は全国10地域に広がった。

地域に根ざした教育を推進する旅する学校(三重県熊野市)が、同プロジェクトの一環として、磯焼けを防ぐ取り組みを開始した。

三重県では海水温が上昇したことで、海藻を食べるブダイやアイゴなどの魚が増殖し、海藻が繁茂しなくなる現象が進む。三重県志摩市の水揚げ量は2019年に比べ、アワビは9割、サザエは7割も減少し、磯焼けの影響が深刻だ。

これらの魚は美味しくないイメージがあり、漁師も好んで水揚げしない。

そこで、市場に出回るよう、地域ぐるみで価値創出に取り組んでいく。地域内外の飲食店や地元の子どもたちとメニュー開発や啓発活動をし、漁師が水揚げしたこれらの魚を積極的に買い取る試みを行う。

岡山県で国内初の「受注漁」

岡山県玉野市で「邦美丸」を操業する富永邦彦さん美保さん夫婦は、消費者から注文の入った魚だけを獲る「受注漁」の販売法を行う。

獲らなくても良い魚はその場でリリースし、水産資源を保全する。弱った魚や紛れて死んでしまった稚魚も廃棄せず、訳ありボックスとして販売する。

毎日漁に出る必要がなくなり、漁船の燃料コストの低下や時間の有効活用も可能となった。直売によって、収入も2017年と比べて約2倍になったという。

美保さんは、「漁協側は初め、前例がないからと消極的な対応だったが、説明をしていく中で、初の事例に対応するためのルール作りに協力してくれた。今では、漁業を盛り上げてほしいといった言葉ももらっている」と話した。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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キーワード: #生物多様性

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