サステナブル・ビジネス・マガジン

投稿者: 希代 準郎

「インパール」遠くにありてなお

「ショート・ショート」(掌小説)こころざしの譜(57) 「雪乃先生、遠くまでようこそ」 検温などの手続きを終え、ねっとりとした空気をまとったヤンゴン国際空港のロビーに出た瞬間、出迎えの生徒が勢いよく駆

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ちっちゃい駐車場、ありがとう

「ショート・ショート」(掌小説)こころざしの譜(56)  真知バアは病院のベッドに横たわり、顔には白い布がかけられていた。私は雨の滴を背に咲く窓際のピンクのガーベラを見ていた。「真知子お義母様が遺言の

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ゲリラと大統領

「ショート・ショート」(掌小説)こころざしの譜(55)  この国はかつてケチュア族が築いた広大無辺の帝国として繁栄したものの白人の征服者に滅ぼされた。以来、栄光とは無縁の虐げられた国だ。 私は今、独房

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結婚プレゼントは年金

「ショート・ショート」(掌小説)こころざしの譜(54)  ブルブルと、マナーモードの携帯が着信を知らせた。表示を見るとケイだった。そのころ夜になると決まったように電話をしてきていた。「東京におって新橋

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コロナ世代の甲子園

「ショート・ショート」(掌小説)こころざしの譜(53)  円藤太郎はいつも通り土と埃まみれで「春の甲子園」目指してノックのフライを追っていた。つらい、苦しい。先の見えない苦行だった。 新型のコロナウイ

COLUMNISTS

レッドリストの事件記者

「ショート・ショート」(掌小説)こころざしの譜(52)  遺影がぎこちなく微笑んでいる。威嚇するような太い眉に大きな鼻と口。今では絶滅危惧種の強面の事件記者だったが、細い目は丸くてやさしかった。死因は

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殺されたソムリエ・ペトロ

「ショート・ショート」(掌小説)こころざしの譜(51)  朝のうちにブドウ木の剪定を終え、うっすらと雪を残した山の斜面を見渡すテーブルで朝刊を広げた田畑光一は思わず声をあげた。「何ですか」大輔が驚いて

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おばあちゃんの恋人(希代準郎)

「ショート・ショート」(掌小説)こころざしの譜(50) 「あれっ、キバタンからのメールによるとお袋ケガしたって。また人騒がせな」 夕食後、パソコンをのぞき込んでいた徹が八の字眉で妻の奈緒子を振り返った

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精子卵子取引所 (希代 準郎)

◆「ショート・ショート」(掌小説)こころざしの譜(47)  女の肌がピンクに染まり汗が浮かんでいる。「感じるーぅ」。腰がうねり下腹部が強く締めあげてくる。ウッッ!男は全身を痙攣させた。あそこが牧場のミ

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消えた自転車人形 (希代 準郎)

◆「ショート・ショート」(掌小説)こころざしの譜(46)  セーヌの川面がキラキラと春の光をはね返している。米国のミネアポリスでジョージ・フロイドという黒人が白人警官に首を押さえつけられて殺されたとい

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もう一つの家族 (希代 準郎)

◆「ショート・ショート」(掌小説)こころざしの譜(45)  銀行の仕事を終えた松山一樹は賑やかな表通りから細い路地に入り、アパートに帰ろうとしていた。今夜、1階の空き部屋にようやく待ちかねた入居者が来

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栄冠に輝く者たち (希代 準郎)

◆「ショート・ショート」(掌小説)こころざしの譜(42)  先日亡くなった旧友から突然手紙が届いた。葬儀が終わったら投函するよう誰かに頼んであったのだろうか。  男の名前は加納正司。元プロ野球選手だっ

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ひな祭り、風の歌(希代 準郎)

◆「ショート・ショート」(掌小説)こころざしの譜(39)  津波に押しつぶされた夕闇の原野にぽつんと黒い棺桶が屹立している。酔い覚ましがてら歩いて帰ろうとしたのはいいが、気まぐれに足を踏み入れた山側で

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