新婚旅行に車イス
「ショート・ショート」(掌小説)こころざしの譜(25) 結婚式の夜、光希子からベトナムへの新婚旅行に車イスを持って行きたいと切り出された時には慎一も困惑を隠せなかった。ニャチャンは海がきれい、歴史を
連載コラム「ショート・ショート」(掌小説)こころざしの譜(25) 結婚式の夜、光希子からベトナムへの新婚旅行に車イスを持って行きたいと切り出された時には慎一も困惑を隠せなかった。ニャチャンは海がきれい、歴史を
連載コラム「ショート・ショート」(掌小説)こころざしの譜(24) 舞台の照明が突然明るくなった。 「さあて、皆さま。本日のスペシャルマッチがいよいよ始まりまーす」 派手な衣装に身を包んだ司会の男が大音量の
連載コラム「ショート・ショート」(掌小説)こころざしの譜(23) 亡くなる前にひとつだけ願いごとを聞いてやると言われたら何と答えるだろう。ある意味残酷な問いかけである。ましてや子供が難病で答えるのがその父親と
連載コラム「ショート・ショート」(掌小説)こころざしの譜(22) 私はユッコ。児童養護施設から小学校に通っている。フィリピン生まれなんだけど、母が出稼ぎに来ていて日本人のおじさんと結婚したの。それで離婚した前
連載コラム「ショート・ショート」(掌小説)こころざしの譜(21) あのころのことを考えると本当に嘘みたいだ。ボクにあんな特別な才能が備わっていたなんて。 あれは、そう、大学に入ってすぐ、オリエンテーション・キャ
連載コラム「ショート・ショート」(掌小説)こころざしの譜(20) 長く勤めた精密機械メーカーを定年まで1年を残して辞めた。少し我慢する手もないではなかったが、社長の傲慢さが腹に据えかねた。心臓が悪いといううわ
連載コラム「ショート・ショート」(掌小説)こころざしの譜(19) 永年勤めた新聞社を私はきょう定年退職する。事件や事故を扱う社会部が長かっただけに仕事には恵まれた。短気な性格で上司ともよくぶつかった。辞めよう
連載コラム「ショート・ショート」(掌小説)こころざしの譜(18) 玄児美(ヒョン・アミ)は駅前の通りを落ち着きなく行ったり来たりしていた。誰もが背を丸め家路を急いでいる。3日前、小学1年生になる娘の春琴(チュン
連載コラム「ショート・ショート」(掌小説)こころざしの譜(17) 田植えが終わり居間でのんびりしていた雅代のところに娘の玲子から突然電話が入ったのはほんの一週間前のことだった。 「お母さん、勇介が・・・」と叫
連載コラム「ショート・ショート」(掌小説)こころざしの譜(16) 「あなた、早くして。もう皆さんが飛行場に着くころだわ」 妻の綾子が隆を自宅の居間から追いたてる。 「わかっている。そうあわてるなよ」 役場に
連載コラム「ショート・ショート」(掌小説)こころざしの譜(15) 瀬戸内海にこんな島があることは誰も知らないだろう。忘れられたような閉じた島。春は島影がおぼろに揺れ、夏には光の束がきらきらと海の面で踊る。秋と
連載コラム「ショート・ショート」(掌小説)こころざしの譜(14) 朝早くから、工場横には夏の光を浴びて長い列ができていた。大人もいるが、目をクリっとさせた登校前の元気な子どもたちの姿が目立つ。みんな背負った籠
連載コラム「ショート・ショート」(掌小説)こころざしの譜(13) 底冷えのする暗い夜だった。周りの山には骨ばったカラスの脚のような小枝が広がっている。嫌なことが起きなければいいが、と不吉な予感を抱えながら八重は
連載コラム「ショート・ショート」(掌小説)こころざしの譜(12) 船越は定年後、ひょんな縁から国際協力NGOで働いている。のんびり余生を送るつもりだったが、そんな甘い夢は妻の芳江に一蹴されてしまった。「ローン
連載コラム「ショート・ショート」(掌小説)こころざしの譜(11) あれっ、これは一体・・・。霞が関の役所に提出する急ぎの報告書をチェックしていた私は、あるページで思わず手を止めた。インターン先のNGOは南米ペ
連載コラム「ショート・ショート」(掌小説)こころざしの譜(10) 大学受験に失敗したあの日からだった、明澄が部屋から出なくなり灰色の世界に籠ったのは。太陽が昇るちょっと前、家から抜け出す。近くのパン屋が焼けた
連載コラム「ショート・ショート」(掌小説)こころざしの譜(9) あれは2020年8月、アフリカ特有の熱風が吹く夏の日だった。内戦が終結したP国でひとりの若い日本人が射殺体で見つかった。現地で国連PKOに参加し
連載コラム「ショート・ショート」(掌小説)こころざしの譜(8) 遠くうっすらと稜線を残して山々が連なる。それを背に草原を駆け抜ける馬の群れ。草はまばらで土煙があがる。ド、ド、ドと地響きを立てて疾走している数は二
連載コラム「ショート・ショート」(掌小説)こころざしの譜(7) 華やかなネオンの谷間に沈んだようにして灰色のドヤ街はあった。女子大生の私は大学院に進み、ホームレス支援の活動を続けながら貧困をテーマに修士論文を
連載コラム「ショート・ショート」(掌小説)こころざしの譜(6) 日が落ち、闇がさびれた工場に溶け始めた郊外の街は静まり返っていた。時折、パトカーが通り過ぎ遠くで犬の吠える声がするくらいで人通りはない。古いビル
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