ファンドレイジングトピックス: 1千のNPOが信頼性見える化

雑誌オルタナ74号(2023年9月28日発行)の「ファンドレイジングトピックス」を紹介します。

■大学の資金調達に7条件

認定特定非営利活動法人日本ファンドレイジング協会(以下、協会)大学チャプターは、大学の職員や関係者がファンドレイジング活動を行う際に参考となる『大学ファンドレイジングの手引「7 つのステップ」に基づく寄付金戦略』を発行した。

大学チャプターは、協会の会員が中心となって設立した、大学のファンドレイジング担当者のネットワークだ。勉強会を開いたり、大学のファンドレイジングの状況などについて調査を行ったりしている。

大学においては、国立大学運営費交付金や学校法人への経常費補助金の削減により、寄付金の必要性が高まっている。

寄付金の必要性は、財務基盤の強化に留まらない。寄付を募集する過程で、企業や地域との連携強化を図れるので、特徴ある経営が可能になるとの認識も広まりつつある。

一方、ファンドレイジングの担当者が大学のファンドレイジングに関する実践的な知識を得る機会が限られている現状もある。大学チャプターは、本シリーズを第1弾としており、今後の出版にも期待が集まる。


カードで寄付の「意義」養う

認定特定非営利活動法人日本ファンドレイジング協会がこのほど開発したカードゲーム「from Me」の活用が広がっている。「from Me」は、お金の使い方を通じて個人のウェルビーイングと社会参画を疑似体験できるカードゲームだ。

クラウドファンディングで開発費を集めた。2023年から開始したカードゲームの体験会には、すでに600人以上が参加した。

チームビルディングの一環として、企業研修などに活用する動きも広がりつつある。武蔵野大では、起業家精神を学ぶアントレプレナーシップ学部の学生が体験し、社会的な活動と自身の活動のつながりを学んだ。

7月に開催されたキックオフシンポジウムでは、この取り組みを紹介し、各分野のリーダーが新しい資本主義における寄付の意義について語った。


ファンドレイジング、学生の力に

名古屋市にある金城学院大学人間科学部コミュニティ福祉学科では2020年からファンドレイジングについて学ぶ授業を提供する。2023年は非営利活動法人が協力し、フィールドワークを行った。学生はNPO職員や地域住民とのコミュニケーションを通じて、各団体が抱える課題や、その解決のために必要なファンドレイジングの取り組みについて学んだ。

この学科では、「ソーシャルウーマン」の育成を目指す。ソーシャルウーマンとは、社会に積極的に参加し、全ての人々が幸せに暮らすことができる社会をつくる女性を指す。ファンドレイジング力を培った学生たちが多様な分野で活躍することを期待したい。


1千のNPOが信頼性可視化へ

公益財団法人日本非営利評価センター(以下、センター)が提供する日本の非営利組織の信頼性を担保するための評価制度の一つである「ベーシックガバナンスチェック制度」の申込み数が1千団体を超えた。

センターは、社会に対して客観的で信頼性のある組織評価情報を提供し、NPOなどの非営利組織の信頼性を上げ、さまざまな支援が届きやすくすることを目的に設立した。

ベーシックガバナンスチェックとは、NPOの組織運営について、法令・定款に基づいた基本的なガバナンスが適切に行われているかどうかを評価するものだ。

助成団体は、助成先にこうした第3者評価の活用を推奨するなど活用が広がっており、応募団体は、申請時に信頼性をアピールすることができる。

センターでは、非営利組織の中でも組織運営やガバナンスが一定水準以上と認証した団体を公開している。

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宮下 真美(日本ファンドレイジング協会)

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