トップコミットメントを得るためには――下田屋毅の欧州CSR最前線(32)

アライアンスブーツ(本社スイス)は、欧州を中心に20カ国で10万人以上のスタッフと3千の薬局を展開している。

アライアンスブーツ、CSRグループヘッドのリチャード・エリス氏は、「私は、10 年前、取締役からの理解を得るために何かしたくても、取締役会の議事の最後に回され、他の議事に時間を取られ議論の時間はほとんどなかった」と言う。

「しかし、取締役の企業責任(CR)委員会が設立されてから、私は取締役会において、年4回、1回につき3時間の時間を得ることができている。私は、我々が直面するサステナビリティの課題について議論をするために、このCR委員会が機能し活用することができている。これは私が人々を説得し、理解を得るために非常に役立っている」

マークス&スペンサー(M&S)は、世界48カ国に700店以上を展開する巨大スーパーマーケットチェーン。同社のサステナビリティマネージャーであるローランド・ヒル氏は、「取締役に対しての教育は外部のCSR/サステナビリティの有識者を講師に迎え、取締役レベルの人にさらに理解を深めてもらっている」という。

また、M&Sのすべての取締役・幹部には、同社のCSRに関するコミットメント「プランA」のターゲットそれぞれに責任が振り分けられており、個人の業績評価と収入に結び付いている。「プランA」のコミットメントの進捗状況は、毎月確認され、取締役と監査委員会には半年ごとに報告されることとなっている。

CSRの推進にあたって、企業トップ・取締役の役割は非常に需要であり、トップダウンなしには成し得ない。上記のロードマップや事例を参考に、是非社内での体制を整備して戦略的CSRの推進を実現して欲しい。

shimotaya_takeshi

下田屋 毅(CSRコンサルタント)

欧州と日本のCSR/サステナビリティの架け橋となるべく活動を行っている。サステイナビジョン代表取締役。一般社団法人ASSC(アスク)代表理事。一般社団法人日本サステイナブル・レストラン協会代表理事。英国イーストアングリア大学環境科学修士、ランカスター大学MBA。執筆記事一覧

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