小泉環境相が大学生と「脱炭素社会」に向け議論

パリ協定では「1.5度目標」の達成に向け、各国に国別削減目標(Nationally Determined Contribution,以下NDC)の提出を義務付けている。NDCとは、「国際公約」のようなものだ。

IPCCの発表などを受け、このままでは1.5度目標が達成できないという危機意識を持ち、NDCを引き上げる国が相次いだ。例えば、EUでは2030年にCO2排出量-40%(1990年比)、スイスは2030年に-50%(1990年比)、ノルウェーは2030年に-40%(1990年比)を表明した。

各国が脱炭素に大きくシフトするなかで、昨年の3月末がNDCの提出締め切りだったが、日本は「引き上げない」と宣言した。NGOから批判を浴び、国際協調を乱す形になったが、こう決断した背景にエネ基がある。

つまり、日本の脱炭素化を進めるためには、エネ基を変えることが重要なのだ。そして、まさにいま、3年ごとに行われるエネ基の見直しが、経産省資源エネルギー庁の分科会(総合資源エネルギー調査会)で行われている。

菅首相の「2050年カーボン実質ゼロ」宣言を受け、政府はカーボンニュートラルの実現に向けて舵を切った。さらに、世界では脱炭素化の勢いは一段と増している。2030年の自然エネルギー目標は、スペインは74%(2019年37%)、ドイツ65%(2019年42%)、イタリア55%(2019年35%)、フランス40%(2019年20%)、米ニューヨーク州70%(2019年29%)、カリフォルニア州60%(2019年53%)――と高い目標を掲げる。

日本の事業者からもエネ基の見直しに関して、自然エネルギーを2030年までに40~50%(2019年18%)に上げるように求める要望書も出た。味の素やイオン、カルビーなど気候変動イニシアティブ(JCI)の加盟企業92社が1月18日、連盟で発表した。

総合資源エネルギー調査会は夏頃に議論をまとめ、その内容をたたき台にしてエネ基を策定すると見られている。

小泉環境相との意見交換会では、エネ基の見直しやNDCの大幅な引き上げについても議論は及んだ。

FFFJからの、「環境省では2050年カーボンニュートラルを目指すと宣言しているが、ベトナムで建設が予定されているブンアン2石炭火力発電事業や横須賀での石炭火力発電計画は宣言と矛盾しているのではないか」という質問に対しては、「皆さんから見たら十分ではないかもしれないが、一歩一歩前に政策を動かしていきたい。再生可能エネルギーの倍増など国会で審議していく」と答えた。

上から目線の啓発ではなく、友達との「対話」を意識

M.Ikeda

池田 真隆 (オルタナS編集長)

株式会社オルタナ取締役、オルタナS編集長 1989年東京都生まれ。立教大学文学部卒業。 環境省「中小企業の環境経営のあり方検討会」委員、農林水産省「2027年国際園芸博覧会政府出展検討会」委員、「エコアクション21」オブザイヤー審査員、社会福祉HERO’S TOKYO 最終審査員、Jリーグ「シャレン!」審査委員など。

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