小泉環境相が大学生と「脱炭素社会」に向け議論

意見交換会では、エネルギー政策だけでなく、政策決定のプロセスに若者をもっと巻き込んでほしいという意見も出た。提案したのは、NO YOUTH NO JAPAN(以下NYNJ)代表の能条桃子さん(慶応義塾大学経済学部4年)。

NO YOUTH NO JAPANのメンバー、写真中央が能条さん

能条さんはデンマーク留学中に、若者の政治参画意識の高さに感銘を受けた。同国では医療費は原則無料だが、メンタルヘルスに関しては有料だった。若い世代が疾患するのは、メンタルヘルスが多く、この問題に関して若者たち自身が政府に働きかけ、医療費の制度を変えた。

当事者が声を挙げ、政府に届けることで社会が変わることを体感した能条さんは、帰国した2019年7月に団体を立ち上げた。30歳以下をメインターゲットにして、インスタグラムなどで政治や社会課題について情報発信をしている。メンバーは高校生や大学生を中心に約70人が所属する。

インスタグラムでは、若者受けを第一に考え、デザインにこだわる。政治や社会課題というと「硬い」印象を想起するが、オレンジとミントグリーンを基調にしたポップなデザインで、親しみやすさを出した。

まだアカウントを開設して1年半ほどだが、すでにフォロワーは10~20代を中心に5.4万人を誇る。10代の人口の1%に当たる12.5万人のフォロワーを獲得することが直近の目標だ。

能条さんは、NYNJが情報発信する際に気を付けていることとしてこう語る。「上から目線の啓発ではなく、同じ目線からの対話を提案している。『知らないといけない』ではなく、『これを考えたいけどどう』という感覚を大事にしている。日常に政治を届けたい」。

問題を解決するときに個人の自己責任としてとらえるのではなく、背景にある社会の仕組みを共有して、対話を心掛ける。今回の意見交換会でも、「レジ袋を有料化したが、背景にあるプラスチック問題をもっと伝えてほしいし、カーボンニュートラルを実現するために気候変動の問題についてもっと説明してほしい」と対話するための「背景」について発信してほしいと繰り返した。

さらに、若者世代を巻き込むために、小泉環境相に自身のSNSアカウントで、自分の言葉で説明するよう助言した。今回の意見交換会に出席するにあたって、NYNJではSNSで小泉環境相に提案したい意見を募集した。わずか1日で150件程度集まり、それらの意見を参考にしながら意見書にまとめた。

「最強のU30向けの政治・社会について発信するメディア」をつくりたいと意気込む能条さんは1998年生まれ。まだ20代前半だが、今の高校生や中学生の活躍は目覚ましいと言う。「年齢関係なく関心を持った子は自分たちで調べて、行動まで起こしている。これらの世代も含めて、政治と若者をつなげる存在になりたい」と語る。

M.Ikeda

池田 真隆 (オルタナS編集長)

株式会社オルタナ取締役、オルタナS編集長 1989年東京都生まれ。立教大学文学部卒業。 環境省「中小企業の環境経営のあり方検討会」委員、農林水産省「2027年国際園芸博覧会政府出展検討会」委員、「エコアクション21」オブザイヤー審査員、社会福祉HERO’S TOKYO 最終審査員、Jリーグ「シャレン!」審査委員など。

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