ALTキーワード:野生動物保護債券
国際復興開発銀行は2021年3月31日、野生動物保護債権の発行を発表した。この種の債券は世界初の取り組みとなる。同行が発行するのは「サイの保護」を目的にした債券。南アフリカの動物保護地域におけるクロサイの個体数増加プロジェクトに資金提供を行う。(もり ひろし)
満期は5年で発行額は1.5億ドル。償還額は元本のみだが、地球環境ファシリティから個体数増加に応じた成功報酬(年率4%の個体数増で最大額の1376万ドル)も受け取れる。成功報酬の仕組みは医療・教育分野の資金調達でよく見られる。
サイは密猟被害が深刻な動物の一つだ。主にベトナム・中国の富裕層がサイの角を漢方薬として珍重することが背景にある。一方サイは生息地域におけるアンブレラ種(食物連鎖の頂点)であり、その保護が地域における生態系の健全化にも寄与する。
生物多様性の保護プロジェクトは、ESG投資の中でも資金調達が不十分だった分野の一つだ。だが本債券のように資金の規模が比較的に大きく(つまり機関投資家にとって旨味があり)、精細な商品設計が伴う債券が登場したことにより、同種の資金調達手法が広がる可能性もでてきた。