記事のポイント
- 埼玉県の産廃処理会社・石坂産業には、世界50カ国から見学者が訪れる
- 注目理由は高い減量化・再資源化率を誇る産廃処理・リサイクル工程だけでない
- 隣接の里山で推進する資源循環や再生の取り組みも国内外から注目されている
埼玉県三芳町（みよしまち）にある産業廃棄物の中間処理事業者・石坂産業には、国内だけでなく世界50カ国から見学者が訪れる。注目される理由は、業界トップ水準の減量化・再資源化率を誇る産廃処理・リサイクルの工程だけではない。隣接の里山「三富今昔村（さんとめこんじゃくむら）」ではバイオトイレや有機農業などを実践し、訪れる人に資源循環やリジェネレーションを考えるきっかけを提供する。創業２代目の石坂典子社長に同社の現状とこれからを聞いた。（オルタナ副編集長＝北村佳代子、オルタナ編集部・松田大輔、写真＝廣瀬真也）
「未来の人材を育てることが企業の役割」と語る
石坂産業 石坂典子（いしざか・のりこ）社長
1992年に父が創業した石坂産業に入社 。2002年に社長、2013年に代表取締役就任。建設系産業廃棄物のリサイクル事業へシフト。地域の環境に配慮した「全天候型独立総合プラント」を建設するなど改革を断行。「Zero Waste Design」をビジョンとし、海と陸を保全する「30 by 30」への参画や、再エネ100％を導入し、脱炭素に取り組む。2016年には日経WOMAN「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2016」情熱経営者賞受賞。2022年ニッポン新事業創出大賞グローバル部門最優秀賞（経済産業大臣賞）受賞。プライベートでは一男一女の母。
■「捨てる責任」も考えた製品設計を
——日本の産廃処理の現状と、貴社の特徴を教えてください。
石坂：日本では、家庭から出る一般廃棄物は自治体が回収しますが、事業者から出る産業廃棄物は全国2万社の中間処理事業者が請け負います。汚染者負担の原則の下、排出した事業者が処理費用を負担する形になっていますが、その量は年間4億トンにも上ります。
当社の創業者は、高度経済成長期の1967年、増え続ける廃棄物を埋め立て続けることに違和感を抱き当社を創立しました。
以来、廃棄物の容積を減らす技術やリサイクル技術を発展させ、最終処分の埋め立てに回る廃棄物の量を徹底的に減らす努力を積み重ねてきました。プラントの電力は100％再エネです。
今、当社の減量化・再資源化率は98％と業界トップ水準です。でも100％にはなりません。
「つくる責任、使う責任」に「捨てる責任」も加えていただく形で製品開発がなされないと、人にとって使いやすいモノほど、廃棄の視点では複合的で処理が困難なモノになっていきます。
ドライバーが視認しやすいよう、大きな文字で廃棄物の種類ごとにレーンを用意。
——産廃処理事業に加え、環境教育にも注力する狙いを教えてください。
石坂：現状、当社の売上のほとんどは産業廃棄物の受け入れによるもので、今後もこの事業が中核であることは変わりません。
しかし、廃棄物を見続ける私たちには、そこから見える真実や課題をきちんと社会に伝えていく企業責任があります。それが環境教育に力を入れる理由です。
一番問題と感じるのは無知や無関心です。だからこそ私たちは、廃棄の現場を徹底的に可視化し、情報を公開し、訪問してくださる方々に、現状と課題を伝えています。
そうして関心を持ってくださった方が、消費者であれ、製造者であれ、それぞれの立場で、どうすればより良い社会になるかを考える。それが、大量廃棄を続ける今の社会のデザインを変えていく力になると思います。
考えるきっかけを提供できる点は、当社の強みの一つです。
■現場を可視化してこそ課題が伝わる
■里山を再生し生物多様性を保全する
■廃棄課題解決に世界で人材を育成する
