NECが国内IT企業初の「TNFDレポート」、その狙いは

記事のポイント


  1. NECは7月10日、国内IT企業としては初となる「TNFDレポート」を発行した
  2. ICT事業を手掛ける同社にとって自然資本への依存度や影響は少ない
  3. 自社のICTサービスが「ネイチャーポジティブ」に役立つことを証明した

NECは7月10日、国内IT企業としては初となる「TNFDレポート」を発行した。ICT(情報通信技術)事業を手掛ける同社にとって自然資本への依存度や影響は少なく、他の製造業に比べてリスクは低い。だが、率先して取り組んだのは、自社のICTサービスが「ネイチャーポジティブ」に役立つことを証明するためでもあった。同社の清水茂樹・執行役CSCO(チーフ・サプライチェーン・オフィサー)が語った。(聞き手・池田 真隆=オルタナS編集長、撮影=高橋 慎一)

清水 茂樹 (しみず しげき):
日本電気 執行役 Corporate SVP 兼 CSCO 兼 サプライチェーン・環境・品質・HW 戦略部門長
1987年4月、日本電気入社。2015年4月、NECマネジメントパートナー執行役員、2017年4月、調達本部長、2018年4月、執行役員 兼 CSCO(チーフ・サプライチェーン・オフィサー)。2023年6月、執行役 Corporate SVP 兼 CSCO、現在に至る。

――7月10日、事業と自然資本との関連性をまとめた、「TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)レポート」を発行しました。自然資本の開示に率先して取り組む理由は何ですか。

NECはICT(情報通信技術)事業を展開する企業なので、産業排水や排気ガスを大量に出してはいません。自然資本に取り組んだ理由は、パーパス(存在意義)に関係しています。NECは、パーパスとして、安全・安心・効率・公平という社会価値の創造と、誰もが人間性を十分に発揮できる持続可能な社会の実現を掲げています。

ICTを使ってそのような社会をつくるには、土台となる自然資本の損失を止めて、回復に向かう「ネイチャーポジティブ」に舵を切ることが重要だと考えました。こうして、自然への依存度や影響を開示することに踏み切りました。

――自然資本のリスクや機会を調べるため、自社のICTサービスを使いました。自社のサービスが自然資本の開示に役立つことを訴求する狙いはありましたか。

あります。気候変動と自然資本は表裏一体の関係で、今後、企業はTNFDへの対応も必要になります。そうした中で、ICTソリューションの存在は大きいです。

むやみに自然資本を食いつぶすのではなく、データドリブンで最適な使い方を見出すことが持続可能な社会につながるからです。 

今回、レポートを発行するにあたり、自社のICTソリューションを使って自然資本と事業の関連性を分析しました。つまり、自社のサービスがネイチャーポジティブに貢献できることを証明したのです。

NECには、「クライアントゼロ」という考え方があります。製品やサービスを他社に提供する前に自分たちが使い、その経験をもとに他社に提供するというものです。だから、TNFDにも、まず自分たちが取り組むことに意味がありました。

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M.Ikeda

池田 真隆 (オルタナS編集長)

株式会社オルタナ取締役、オルタナS編集長 1989年東京都生まれ。立教大学文学部卒業。 環境省「中小企業の環境経営のあり方検討会」委員、農林水産省「2027年国際園芸博覧会政府出展検討会」委員、「エコアクション21」オブザイヤー審査員、社会福祉HERO’S TOKYO 最終審査員、Jリーグ「シャレン!」審査委員など。

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キーワード: #生物多様性

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