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2021年から今年にかけてコロナ禍とウクライナ問題を背景とする世界的なインフレ傾向が加速中だが、欧州ではグリーンフレーション(グリーン+インフレーション)という別の背景も注目されている。これは「脱炭素化がもたらす物価上昇」のことだ。 例えば欧州中央銀行のシュナーベル専務理事は「脱炭素化が中期的にインフレ率を上振れさせるリスク」を指摘している。(もり ひろし)
要因はいくつかある。第一は脱炭素化に伴う需給逼迫。例えば電気自動車に必要な希少金属の生産が追いつかなくなり、資源価格の高騰につながる問題だ。
第二は脱炭素化に伴う企業の設備投資が価格として転嫁されること。そして第三は脱炭素化の推進政策(温室効果ガスの排出に費用負担を求めるカーボンプライシング制度の導入など)に伴う価格上昇の問題だ。
過度なインフレは社会生活への悪影響が大きいのみならず、金利上昇のため脱炭素化の資金調達もより困難になる。つまり脱炭素化を急げば急ぐほど、脱炭素化が遅れるパラドックスが生じる。
今後「インフレ率の適切な制御」や「脱炭素化コストの急騰を防ぐ調整」などが課題となるが、いずれも容易な作業ではない。