ドミノ・ピザが業界初「SBTネットゼロ認定」、その狙いは

記事のポイント


  1. ドミノ・ピザは2023年7月、業界初の「SBTネットゼロ認定」を取得した
  2. 森林・土地・農業分野に特化した「SBT・FLAGガイダンス」の認定を受けた
  3. グローバルのESG担当役員、日本法人のCEOに認定取得の狙いと展望を聞いた

ドミノ・ピザエンタープライズは2023年7月、脱炭素の国際的な認定機関SBTイニシアチブから「ネットゼロ認定」を取得した。フードデリバリー(クイック・サービス・レストラン)業界としては、初の取得だ。SBTiが森林・土地・農業分野のために新設した「FLAGガイダンス」に基づき酪農などチーズ生産時の温室効果ガス排出量削減や、環境配慮型店舗、Eモビリティの導入などを通して2050年ネットゼロを目指す。10月上旬に来日したマリカ・ステッグマイヤー・チーフESGオフィサーと、日本法人のマーティン・スティーンクスCEOに、その狙いと展望を聞いた。(オルタナ副編集長・長濱慎、撮影=高橋慎一)

マリカ・ステッグマイヤー・チーフESGオフィサー(左)と、マーティン・スティンクス・ドミノピザジャパンCEO

マリカ・ステッグマイヤー
ドミノ・ピザエンタープライズ・チーフESGオフィサー。オランダ出身。飲食料品サービス企業の「バーググループ」でサステナビリティマネージャー、コンサルティング会社「ベレンショット」でシニアコンサルタントなどを務めた後、ESGの最高責任者として2021年ドミノ・ピザに入社、現在に至る。

マーティン・スティーンクス
ドミノ・ピザジャパンCEO。オランダ出身。学生時代にアルバイトクルーとしてドミノ・ピザオランダに入社、卒業後店長に。そこからスーパーバイザー、フランチャイズ・オペレーション・ディレクターなどを経て2021年9月、ドミノ・ピザ台湾CEOに就任。2022年7月から現職。

■SBTiと関係の深い環境コンサルと連携

――7月にQSR(クイック・サービス・レストラン)チェーンとして世界で初めて、最新のFLAGガイダンスに基づく「SBTネットゼロ認定」を受けました。改めて、取得の狙いを教えてください。

マリカ:ドミノ・ピザエンタープライズは、アメリカ発祥のドミノ・ピザのマスターフランチャイジーとしてオセアニア、欧州、アジアの3地域12ヵ国で約3800以上の店舗を展開しています。

そして2030年を見据えたESG戦略として「Domino’s for Good(ドミノ・フォー・グッド)を策定しました。そこで取り組むべき柱として、食の安全や人権の尊重とともに気候危機対策を掲げています。

温室効果ガスの削減はパリ協定の1.5℃目標と整合し、国際的に認められた科学的根拠に基づいたものでなければなりません。このような考えから、SBTネットゼロ認定を取得しました。

認定取得にあたっては、環境サステナビリティ・コンサルタントの「クアンティス(Quantis)」と連携しました。同社は欧州や米国に拠点を置き、企業のSBTに対してガイダンスと評価を行う独立機関であるSBTiの専門家と密に連携しています。

特に削減目標の設定や検証については、クアンティスのような環境問題の専門家とのパートナーシップが必要不可決でした。

97%が「スコープ3」、大半がチーズ由来の排出

――認定の取得には、まず温室効果ガス排出量を把握する必要がありますね。

マリカ:ドミノ・ピザエンタープライズの2022年の排出量は155万トンでした。そのうちスコープ1(主に調理やデリバリー)とスコープ2(主に電力)は3%で、残り97%をスコープ3(サプライチェーンで発生する間接的な排出量)が占めていました。

そしてスコープ3の大半が、乳製品また動物由来のたんぱく質から発生していました。これは酪農をはじめとするチーズの製造に由来するもので、FLAG(Forest, Land and Agriculture)がカバーする領域です。

FLAGは全世界の温室効果ガス排出量の2割以上を占める森林・土地・農業セクターの削減のため、SBTiが22年9月に新設したガイダンスです。

FLAGの対象は「ファームゲート(生産者の拠点を出る)まで」です。これ以降の物流や店舗での排出量については、従来のSBTの方法論に沿って削減目標を設定します。ドミノ・ピザエンタープライズは、以下のような約束をしました。

・2050年度までにスコープ1・2・3を含むサプライチェーン全体で温室効果ガス排出量をネットゼロ

・2030年中間目標として、2031年度までにスコープ1・2 を46.2%削減(2021年度比)

・2031年度までにスコープ 3を期間内に販売するピザ 1 枚あたり55% 削減(FLAG関連以外) 

・2031年度までにFLAG関連のスコープ3(絶対排出量)を33.3%削減(2021年度比)

・2025年12月31日を目標日として、森林破壊に関連する主要商品において森林破壊を行わない

上記の2030年目標を要約、またこの目標を各商品に適用した場合、2031年までに温室効果ガス排出を65%削減できると期待しています。

乳製品サプライヤーや研究者とのパートナーシップを重視

国内店舗では電化を推進、再エネ調達が課題に

■グローバルのCEO自らが「ESG運営委員会」を指揮

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S.Nagahama

長濱 慎(オルタナ副編集長)

都市ガス業界のPR誌で約10年、メイン記者として活動。2022年オルタナ編集部に。環境、エネルギー、人権、SDGsなど、取材ジャンルを広げてサステナブルな社会の実現に向けた情報発信を行う。プライベートでは日本の刑事司法に関心を持ち、冤罪事件の支援活動に取り組む。

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キーワード: #脱炭素

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