記事のポイント
- インドネシア・アシェ州で森林減少を8割抑制した活動家に話を聞いた
- ペプシコなど大手の資金を活用し、農家の貧困対策と森林保全を両立した
- 違法農園をアグロフォレストリーなどで再生して気候災害にも備える
世界有数の熱帯雨林を抱えるインドネシアで森林破壊が再び拡大する中、同国アチェ州では過去10年で森林減少を8割抑制するのに成功した。違法伐採の背景には住民の貧困があったが、ペプシコなどが外資大手を巻き込んで、既存農地の生産性向上やアグロフォレストリーを進めてきた。取り組みを主導し、「環境ノーベル賞」と呼ばれるゴールドマン環境賞受賞者のルディ・プトラ氏に話を聞いた。(オルタナ副編集長=京正裕之)

インドネシアは国土の半分以上を森林が占める。インドネシア環境・林業省によると、2024年に森林に覆われていた土地は9550万ヘクタールで、国土の51.1%に当たる。このうち8780万ヘクタールは政府が指定する「森林区域」内にある。 一方、環境NGOアウリガ・ヌサンタラによると、25年の森林減少面積は43万3751ヘクタールと24年から66%増えた。
こうした中で、森林減少の抑制で成功しているのが、インドネシア最西端アチェ州と北スマトラ州にまたがる約260万ヘクタールの熱帯雨林「ルーセル・エコシステム」だ。オランウータン、トラ、ゾウ、サイが野生下で共存する「地球上最後の場所」とされ、400万人以上に水などの生態系サービスをもたらす。一方、1970年から2024年までの54年間で42万9000ヘクタール以上の森林が失われた。
プトラ氏は長年、ルーセルの森林保全に携わってきた。違法なアブラヤシ農園を住民と共に撤去するなどした活動が評価され、2014年にはゴールドマン環境賞を受賞した。

■「逮捕」だけでは森は守れない
プトラ氏の原点は故郷アチェ・タミアンの川にある。少年時代に自宅近くの澄んだ川で毎日のように泳ぎ、魚を捕った。しかし1980年代末、周辺でアブラヤシ農園の開発が進み、木々が伐採された。数年後には農園から流れ込んだ化学物質で大量の魚が死んだという。
大学で生物学を学び、在学中にルーセル・エコシステムでオランウータンを研究した。その後はレンジャーとして違法伐採や密猟の監視に取り組んだ。だが現場を歩くうち、取り締まりだけでは森林破壊を止められないと気付いた。
「私たちの経験では、違法伐採や密猟をするのは地元の住民で、彼らは貧しい。ほかに選択肢がなく、森に入ってゾウなどの動物を密漁したり、違法伐採したりする人がいる」

住民の中には土地を持っていても、伝統的な農法に頼り、生産性を十分に高められない人もいたという。プトラ氏は、森林破壊の背景には住民の貧困や生計の問題があると考えるようになった。
仮に違法伐採をした住民、つまり一家の働き手を逮捕すれば、家族は収入を失い、子どもが学校に行けなくなることもある。「逮捕することは解決策ではない。解決策は、彼らの経済状況を改善し、安定した収入源をつくることだ」
そこでプトラ氏は2012年に環境保全団体「ルーセル保全フォーラム(FKL)」を設立した。森林を守る「保護」、新たな土地を開かず生産性を高める「生産」、住民や女性、若者らを巻き込む「包摂」を組み合わせた3つの柱「PPI(Protection、Production、Inclusion」を掲げて活動をしている。
■ペプシコを起点に外資企業を巻き込む
■アグロフォレストリーで違法農園を再生
■赤道近くで異例のサイクロンが森林破壊
■日本企業にも熱帯雨林保全への投資呼びか

