世界の気温上昇、3年間で産業革命前から1.5℃超の見込みに

記事のポイント


  1. 欧州の気象情報機関によると11月の世界気温は産業革命前から1.54℃上昇した
  2. 2025年通年では、観測史上2番目か3番目に暑い1年になると予測する
  3. 2023年から2025年の3年平均では、上昇幅が1.5℃を上回る見込みだという

欧州の気象情報機関であるコペルニクス気候変動サービス(C3S)は12月9日、2025年11月単月の世界平均気温が、産業革命前から1.54℃上昇したと発表した。2025年通年では、観測史上、2番目か3番目に暑い1年になりそうだと予測する。C3Sは、2023年から2025年までの3年平均で、気温上昇幅が産業革命前から1.5℃超になるとの見通しも示した。(オルタナ輪番編集長=北村佳代子)

2025年までの直近3年間の平均で、世界の平均気温は産業革命前から1.5℃を超えることが「ほぼ確実」に

2024年は観測史上、最も暑い1年となり、産業革命前から1.5℃を上回る気温上昇となった。パリ協定では、地球温暖化を産業革命前から「1.5℃以内」の気温上昇に抑えることが事実上の共通目標となっている。

C3Sは2025年通年での気温上昇について、産業革命前から1.5℃を上回らない可能性も残っていると見る。しかし、観測史上2番目もしくは3番目に暑い1年になることは「ほぼ確実」だとの見通しを示した。

産業革命前と比べた、世界の気温上昇の推移。
2025年は11月までの11カ月平均では、
史上2番目に暑かった2023年と同程度の1.48℃の上昇に
(c) C3S/ECMWF

欧州中期予報センター(ECMWF)のサマンサ・バーゲス気候戦略責任者は、「3年間の平均気温としては初めて1.5℃を超える見込みだ。こうした節目は、抽象的なものではなく、気候変動の加速を反映している。将来の気温上昇を緩和する唯一の方法は、温室効果ガス排出量を急速に削減することだ」と力を込めた。

もはや避けられなくなってきている気候変動の影響に対しては、人間社会や自然の在り方を調整し、被害を最小限にとどめる適応策も必要となる。

英エクセター大学で気候影響学を専門とするリチャード・ベッツ教授は、排出量削減と適応策が必要なのに加え、「1.5℃目標を諦めないことが重要」と英紙にコメントした。「迅速に行動することで、さらなる被害を抑えることができる。だが、対応が遅れれば、困難と費用は増大する」(ベッツ教授)

2025年11月は、産業革命前から比べて1.54℃の上昇となった。11月としては観測史上3番目に暖かい月となった。

東南アジアでは11月、記録的な豪雨により広範囲で洪水・土砂災害が発生し、インドネシアやタイ、スリランカの3か国だけで1400人を超える死者が出るなど、甚大な気候災害に直面した。

直近3年の、月ごとの気温上昇幅(産業革命前比)
(c) C3S/ECMWF
北村(宮子)佳代子(オルタナ輪番編集長)

北村(宮子)佳代子(オルタナ輪番編集長)

オルタナ輪番編集長。アヴニール・ワークス株式会社代表取締役。伊藤忠商事、IIJ、ソニー、ソニーフィナンシャルで、主としてIR・広報を経験後、独立。上場企業のアニュアルレポートや統合報告書などで数多くのトップインタビューを執筆。英国CMI認定サステナビリティ(CSR)プラクティショナー。2023年からオルタナ編集部、2024年1月からオルタナ副編集長。

執筆記事一覧
キーワード: #気候変動

お気に入り登録するにはログインが必要です

ログインすると「マイページ」機能がご利用できます。気になった記事を「お気に入り」登録できます。