3.11から10年、最大の鎮魂を考える

【連載】地球の目線2021(4)

3.11東日本大震災からまもなく10年。

あの経験を通じて私たちは、こうした大災害が「未曾有」でも「想定外」でもなく日本列島の「常態」なのだということを知った。

実際、過去にも貞観津波はじめ大体100年〜150年に一度、明治・昭和三陸沖津波のレベルであればほぼ毎世代、日本のどこかで起こっていた事実があらためて認識された。

311で甚大な被害を受けた岩手県大船渡市

にもかかわらず私たちの都市や社会は、未だこのような「変動を前提にした設計」にはなっていない。ビルの耐震基準や原発の災害想定の話ではない。もっとマクロに首都壊滅や東海・東南海の広域被災を前提とした、予防減災と被災後数十年の「青写真」がいまだ描かれていないということだ。

首都直下型震災では、仮に命が助かっても首都圏の数百万人が住処と仕事を失うと想定される。東海東南海地震津波では三大都市圏をはじめ東海道の大動脈が麻痺し、十数年にわたって日本社会と経済の血流のバイパス手術が必要となる。300年も「異例の沈黙」を続ける富士山の噴火による首都圏の機能不全も懸念される。

私たちが生きている間にほぼ確実にやって来る国土スキームの壊滅を、問題があまりに大きいからと思考停止に陥り、被災してから「臨戦態勢」に入るだけでは、これまでと何も変わらない。

それでは東日本大震災で犠牲になった方々に申し訳が立たない。同レベルの地震津波が近未来に想定されるこの列島で、二度と同じ犠牲を出さないこと、そうした社会と国土の再設計を未然に行うことこそが、最大の鎮魂なのではないか?

■「予期・予測・予防減災」しうる人類史上初めての世代に

shinichitakemura

竹村 眞一(京都芸術大学教授/オルタナ客員論説委員)

京都芸術大学教授、NPO法人ELP(Earth Literacy Program)代表理事、東京大学大学院・文化人類学博士課程修了。人類学的な視点から環境問題やIT社会を論じつつ、デジタル地球儀「触れる地球」の企画開発など独自の取り組みを進める。著者に『地球の目線』(PHP新書)など

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