「年間被ばく20ミリでは住めない」福島県双葉町長が退任メッセージ

23日に退任を表明した福島県双葉町の井戸川克隆町長のメッセージが同町のウェブサイトに掲載された。この中で井戸川町長は「福島県内では放射能という毒で県民のDNAを痛めつけている」と述べ、年間被ばく線量20ミリシーベルト以下での帰還を進めようとする国や福島県の復興の進め方を厳しく批判している。

井戸川克隆・福島県双葉町長(同町サイトから引用)

メッセージの題名は「双葉町は永遠に」。この中で井戸川町長は町民に対して「(東京電力福島第一)原発事故で負けるということは、今のまま何もしないこと。今はそれぞれの地に離れて住もうとも、廃炉が完了して故郷から放射能の危険が去り、自然と共生出来るようになったら再結集しよう」と呼びかけている。

そして原発事故に勝つためにするべきこととして、国や東京電力をはじめとする事故の原因者の確定や、原発事故で町民が受けた損害の算定、積算、回復の請求、そして水俣の住民の苦難に学ぶことなど12項目を挙げた。

また、国や県の復興方針に対しては「福島県内では放射能という毒で県民のDNAを痛めつけている。後先が逆だ。この状態から一刻も早く避難をさせること以外に、健康の保証は無い。その後に十分時間をかけて除染をやれば良い」「人工放射能に安全の基準を言う実績が少ない。(年間被ばく線量)20ミリシーベルトで住めると言う人が家族と一緒に住んで示すことが先。その安全が確認出来たら福島県民は戻ればいい」と強く疑問を投げかけている。

井戸川町長は一昨年の東電原発事故直後、1号機が爆発した3月12日に「死の灰」に遭遇。役場機能を埼玉県加須市内に移転したが、福島県外への避難を続ける姿勢の同町長と、県と協調して復興を進めるよう求める町議会との間で溝が深まり、町議会は昨年12月20日に町長の不信任案を可決。これに対して井戸川町長は同26日に議会を解散していた。また、今月20日に同町長は体調を崩し、郡山市内の病院に一時入院した。

今回の退任メッセージに対してネット上では「こうやって日本は福島を切り捨てるのか」「行政の長の談話というより、百姓一揆の頭目の遺言のようだ」などと反響が寄せられている。(オルタナ編集部=斉藤円華)

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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