社会を変えるプロフェッショナル「ファンドレイザー」とは[鴨崎 貴泰]

社会課題の解決に向けて、活動資金を集めるプロフェッショナル「ファンドレイザー」に注目が集まっている。日本ファンドレイジング協会(東京・港)は、日本でもファンドレイザーを育成しようと2011年から認定事業を行い、今年4月からは東京、大阪、名古屋で研修を開催している。「ファンドレイザー」とは何か、同協会の鴨崎貴泰事務局長に寄稿してもらった。

「ファンドレイジング」とは、NPO(Non-Profit Organizations:民間非営利団体)が活動のための資金を個人、法人、政府などから集める行為の総称です。ただし、その意味は、単なる資金調達にとどまらず、自団体が取り組む社会的課題に対する人々の理解と共感を広げ、課題解決自体に参加してもらう「社会を変える手段」なのです。そして、「ファンドレイジング」を通じて、NPOと社会をつなぎ、社会を変えるプロフェッショナルこそ「ファンドレイザー」です。

■日本にこそ求められる「ファンドレイザー」
莫大な国債を抱えて財政が悪化している日本では、社会的課題解決を税金だけで行うことは既に限界ですし、それらを市場原理だけで解決することもできません。

日本社会を変えるファンドレイザーたち
日本社会を変えるファンドレイザーたち

当協会の調査(寄付白書2013)によると、日本の個人の寄付額は約7000億円(2012年)であり、米国の2289億ドル(約18兆円/1ドル=80円換算、2012年)の4%にも満たない小さな規模です。ただし、そこに日本でファンドレイザーが活躍できる大きなチャンスがあります。

例えば、2013年の内閣府の調査によると、「社会に役立ちたいと思っている」と回答する人が7割近いのに対し、実際に寄付などのアクションを行っている人は約4割(寄付白書2013)と3割近いギャップがあります。

また、超高齢化の進む日本では、2008年推計で60歳以上の金融資産は890兆円であり、野村総研の推計では年間の相続額は4~50兆円にも達します。

当協会の調査(寄付白書2013)によれば、40歳以上の約24%が、「相続の一部を寄付してもよい」と回答していることから、少なくとも数兆円の寄付の創出可能性があります。しかし、実際の遺贈寄付は約74億円であり(寄付白書2013)、相続額の約0.1%と極めて低いのが現状です。4〜6割程度が遺言を残し、NPOなどに寄付をする人の多い米国と対照的な状況です。

このように、日本は寄付等のニーズが非常に高いが現状との間に大きなギャップがあることが課題なのです。そして、NPOと社会をつなぎ、この大きなギャップを埋めるのがファンドレイザーの仕事であり、いまの日本にこそ「ファンドレイザー」が求められている理由です。

■世界でも人気の職業「ファンドレイザー」

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鵜尾 雅隆(日本ファンドレイジング協会代表理事)

連載:社会イノベーションとお金の新しい関係 日本ファンドレイジング協会代表理事。国際協力機構、外務省、米国NPOを経て、ファンドレイジング戦略コンサルティング会社ファンドレックス創業。寄付、社会的投資の進む社会を目指して日本ファンドレイジング協会を創設。著書に『ファンドレイジングが社会を変える』など。

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