[映画評:首相官邸の前で]世論を可視化した脱原発デモ

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2012年6月29日に20万人が首相官邸前に集まり脱原発の声をあげた。「首相官邸の前で」(小熊英二監督、2015年日本作品、配給アップリンク)は社会的なうねりとなったデモを記録したドキュメンタリー映画だ。個人がインターネット上に投稿した映像と、福島第一原発事故当時、首相を務めた菅直人氏をはじめ、監督がデモの現場で出会った8人のインタビューで構成。淡々とした映像は、参加者一人ひとりの思いと行動が、やがて世論となっていく過程を映し出している。(松島香織)

「首相官邸の前で」(小熊英二監督、2015年日本作品、配給アップリンク)

「首相官邸の前で」(小熊英二監督、2015年日本作品、配給アップリンク)

1968年前後のデモは組織が声をあげ、時には暴力に訴えることさえあった。2011年3月の原発事故をきっかけとした脱原発デモは、組織的な動員でなく個人がそれぞれに参加した非暴力の社会運動だ。カラフルな衣服を身に付け楽器を鳴らす様子は「パレード」とも言われる。

一部の人から「交通渋滞を起こし、うるさい」と非難され、主催者は「デモを長続きさせ世論になること」を考えるようになったと話す。病院前では音量を小さくし、警察との調整にも配慮。定例で開催していた集会場所を経済産業省から首相官邸前へ移し、毎週金曜日に定着させた。

小熊監督がドキュメンタリー映画に収めたのは、デモという非暴力の社会運動だ

小熊監督がドキュメンタリー映画に収めたのは、デモという非暴力の社会運動だ

デモはSNSを利用して突発的に人が集まると解釈されがちだ。だがSNSでの拡散には限界があり、友人や職場などの実際の人間関係が参加者動員に繋がったというエピソードが興味深い。

本作は東京・渋谷アップリンクで上映中。「いろいろな見方ができる映画。隣の人と話し合ってほしい」という小熊監督の意向で、上映後はトークシェアを行う。東京・渋谷のほか、広島、愛知、大阪など全国で順次上映予定。

◆「首相官邸の前で」公式サイト
http://www.uplink.co.jp/kanteimae/

◆アップリンク
http://www.uplink.co.jp/movie/2015/39133

2015年9月29日(火)12:52

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