三井物産と復興支援メディア隊がつくる「出前授業」

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東日本大震災の直後から約5年間にわたり、三井物産は、BSの番組「未来への教科書~For Our Children」の制作および放映を支援してきた。同番組は、震災直後から被災地の「今、課題、未来」をテーマに、地域で活動する人々の生の声を記録し、困難を乗り越えていくエピソードを紹介。取材者数は延べ約300人、放送回数は117回を数えた。放送は2016年3月に終了したが、番組から生まれた、東北の復興を担う子どもたちに「生きる力を育む」をテーマとする授業を提供する「出前授業プロジェクト」は今も実施されている。(一般社団法人RCF=荒井美穂子)

2014年から開始した「『未来への教科書~For Our Children』出前授業プロジェクト」。三井物産は、復興支援事業として同プロジェクトを協賛してきた。番組で取材した延べ約300人の中から、地域に根差した活動を行うキーパーソンを取り上げて一冊の教科書を作成し、実際に取材にあたった復興支援メディア隊のメンバーと登場人物自らが、この教科書をもとに1日先生として学校に出向き、将来の職業選択の鍵となる地域貢献や活性化について考える授業を行う。

過去2年半にわたり、東日本大震災で大きな被害のあった岩手、宮城、福島の計15校にて開催し、約2000名の生徒が参加。2016年度は岩手、福島の6校での実施が決定され、本年第4回目の授業が2017年1月31日、岩手県大船渡市三陸町の吉浜中学校で実施された。

■継続すべき復興支援のカタチ

三井物産ソーシャルリレーションシップマネージャーの吉川里香さんは、このプロジェクトのきっかけとなった番組について、三井物産の情報産業部門が運営するBS12チャンネル「TwellV(トゥエルビ)」の社員が震災直後に被災地に入った際に復興支援メディア隊と出会い、放送局の使命として「何」を伝えるべきかを共に考えたことが始まりと語る。

復興支援メディア隊は、大震災を乗り越え立ち上がろうとする東北の人々の力強い姿を映像のチカラで伝えることを目的に、映像制作のプロにより結成された組織。

結果、映像制作のプロと放送局が協力し、被災地の「今、課題、未来」をテーマに、地域で活動する人々の生の声を記録し、助け合いながら未曾有の大震災による困難を乗り越えていくエピソードを番組で紹介してきた。映像を通して、時間の経過と共に変わる被災地の課題や実態を全国の多くの人に向けて発信することが長期的な被災地支援につながると考えたからだ。

放送は2016年3月に終了したが、番組から生まれた、東北の復興を担う子どもたちに「生きる力を育む」というテーマは「出前授業プロジェクト」に受け継がれている。

■「0から働くを考える」

生徒達の前で自身の経験を語る及川氏

この日の授業には全校生徒が参加。今回の講師を務めたスリーピークス代表取締役及川武宏さんが掲げたテーマは「0から働くを考える」。

授業に先だって、三井物産の吉川さんは、自社の仕事について「国を越えた豊かな未来づくりを目指している。世界や日本の社会課題と向き合い、課題を解決し、持続可能で豊かな社会を実現することを目標として、社員がさまざまな分野で働いている」と紹介し、「人のつながり」の大切さや、講師の話を通じて子ども達が将来「働く」ことのイメージをつかんで欲しいと伝えた。

講師の及川さんは震災後に東日本大震災復興支援財団に所属後、地元である大船渡市に戻り、三陸を思い出す美味しいワインを造りたいという思いから、ブドウ畑を始め、Three Peaks Winery(スリー・ピークス・ワイナリー)」というワイナリーを立ち上げた。その後、リンゴ畑も譲り受け、シードルの開発も進めている。子どもたちは、同じ大船渡の出身である及川さんの生い立ちから、夢を見つけ、夢の実現のために必要な経験を見極め、さまざまな経験の後にワイナリーを始めるまでの物語に聞き入った。

質疑応答では「夢を実現するには、何を頑張っていけばいいですか?」「仕事をするうえで、一番大事にしていることは何ですか?」などの質問が次々に飛びだし、その一つ一つに及川さんが丁寧に答えていた。

■授業での学び

熱心に聞き入る生徒達

3年目となった「出前授業」プロジェクトには、昨年度「出前授業」を実施した学校の先生から、出前授業がきっかけになり学校を休みがちだった生徒が「やりたいこと」を見つけ、積極的に勉強するようになったなど、うれしい報告も入ってきた。

参加した子ども達だけでなく、講師の側にも学びがある。今年度、岩手県立久慈東高校での出前授業を担当したNPO法人東北開墾代表理事高橋博之さんは、食を守る一次産業の大切さを語った授業の中で「農業や漁業を目指そうとする人は手を挙げて」と尋ねたが、生徒達からは誰一人手が上がらなかった。

高橋さんは「食べ物を作る仕事は尊いにもかかわらず、その価値がなかなか認められない現実がある。それをどう受け止めていくか、自分の中でも思いを新たにした」と語っている。

■人とのつながりが作る「未来」

映像制作のプロと放送局が現地で出会い、地域で活動する人々の生の声を記録し、紹介してきた番組。出前授業として形を変えても、子ども達は講師の夢や人生に触れて、今日のつながりを「生きる力」に変えて「想い」をつなぎ、未来を作っていくことだろう。

『未来への教科書~For Our Children』出前授業プロジェクトの様子は、復興支援メディア隊For Our Childrenのサイトで見ることができる。

◆いわて三陸復興のかけ橋「復興トピックス」

一般社団法人 RCF
2011年4月、震災復興のための調査を行う団体として発足。現在は復興事業の立案・関係者間の調整を担う「復興コーディネーター」集団として活動。代表理事は藤沢烈。活動例として、2015年度はいわて未来づくり機構を母体とする「いわて三陸 復興のかけ橋プロジェクト」を岩手県より受託し、岩手県内各地と県外企業・団体の復興支援マッチングを推進している。

2017年3月22日(水)22:37

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