水素社会実現に向け「ダーウィンの海」を乗り越えよう

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日経社会イノベーションフォーラム「水素が導くSociety 5.0」がこのほど、都内で開催され、産官学15名の登壇者から、水素社会の実現にむけての現状の取り組みや提言がされた。(オルタナ総研スペシャリスト=室井 孝之)

日経社会イノベーションフォーラム「水素が導くSociety 5.0」

地球環境問題が深刻化する中、「水素」は、電気や熱に変えてもCO2や窒素酸化物などの有害物質を排出しないクリーンエネルギーとして注目されている。

本フォーラムでは、水素社会の未来像とともに、「国際水素サプライチェーン構築」「CO2フリー水素製造技術確立」を通じての「発電コストの大幅コストダウン」などの水素社会実現のための課題が示された。

橘川武郎・東京理科大学大学院経営学研究科教授は、「水素社会に向けたイノベーション実現には、『魔の川(研究ステージと開発ステージの壁)』『死の谷(開発ステージと事業化ステージの壁)』『ダーウィンの海(事業化ステージと産業化ステージの壁)』」という3つの壁がある。この壁を乗り越えるには、産官学の連携が不可欠だ」と強調した。

高科淳・経済産業省資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長は、「Society 5.0」「第5次エネルギー基本計画」「水素基本戦略」について述べた。

「Society5.0」は、科学技術基本法に則った「第5期科学技術基本計画」において我が国が目指すべき未来社会の姿を、政府(内閣府)が2016年に提唱した。ビッグデータを踏まえたAIやロボットが、人間が行っていた作業や調整を代行・支援するため、日々の煩雑で不得手な作業から解放され、一人ひとりの人間が中心となる社会である。

「水素基本戦略」は、政府(資源エネルギー庁)が2017年12月に策定し、2050年を視野に入れた「官民が共有すべき方向性・ビジョン」を示した。「FCV(燃料電池車)を2030年までに80万台普及」「水素ステーションを2025年までに320箇所を整備」「水素ステーションでのコストの、現状100円/Nm3(ノルマルリューベ)から2030年に3分の1以下へのコストダウン」「家庭用電池(エネファーム)の2030年530万台導入」などが盛り込まれている。

自治体からは、神戸市長、川崎市長、東京都知事が登壇した。久元喜造神戸市長は、「水素スマートシテイ神戸構想」として、オーストラリアの褐炭を使用した水素から利活用した熱・エネルギーを中央市民病院、神戸国際展示場に供給する「水素サプライチェーン構築実証事業」を紹介した。

福田紀彦川崎市長は、「川崎水素戦略」として、「災害時に300名に7日電気を供給する水素BCPモデル」「クリーン水素活用モデルとして燃料電池フォークリフト導入」について述べた。

小池百合子東京都知事は、「水素社会実現に向けた取組」として、「福島県浪江市で製造された水素を東京オリンピック・パラリンピックの選手村で活用するプロジェクト」を強調した。

産業界からは、トヨタ自動車が「トヨタ燃料電池バスの展望」、三菱化工機が「CO2フリー水素導入」、東芝エネルギーシステムズが「再エネ水素がもたらす新しいソリューション」、岩谷産業が「水素エネルギー社会を拓く」と題し各社の現状・課題を述べた。

菅原英喜・日本水素ステーションネットワーク(ジェイハイム)社長は、「燃料電池自動車普及に向けた水素ステーション整備」と題し、「同社は、『水素基本戦略』の水素ステーション整備の推進役と位置づけられ、『FCVと水素ステーションの好循環』を目指す」と強調した。

原田英一川崎重工業執行役員は、「国際水素サプライチェーンの実現」と題し「オーストラリアのラトローブバレーの褐炭を原料とした水素製造法」、「Hydrogen Council(水素協議会)」について述べた。

2018年8月24日(金)10:16

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