ロヒンギャに隠れて見えない「カレン族」迫害の現実

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書評『国境の医療者』(新泉社、2019年4月)
編者:メータオ・クリニック支援の会
写真:渋谷 敦志
評者:林 啓史(中小企業診断士/CSR検定「CSRエキスパート」)

ミャンマーでは現在、ロヒンギャ難民問題がクローズアップされているが、少数民族カレン族に対する迫害についてはほとんど報道されていない。その迫害によってミャンマーからタイ側に避難した十分な医療を受けられないカレン族難民が頼る場所が、タイ・ミャンマーの国境にある「メータオ・クリニック」である。

本書は「メータオ村」で1989年からビルマ難民・移民に無償を続けている「メータオ・クリニック」このクリニックに国際ボランティアとして日本から派遣された医療従事者たちのエッセイ集である。

ここに派遣され、日本ではありえない生と死の不条理さに当惑し、傷つき、昨今、日本でも国内感染が確認された「デング熱」に罹患し苦しむ。それでも現地の人びとから学び、改善し、成長を続けてきた日本の医療従事者。本書は、彼女たちの10年にわたる現地での活動を歴代7人の医療従事者たちがリレー形式で綴ったノンフィクション作品である。

――難民キャンプから、国際NGOが撤退していく。まるで人道支援の縮図。NGOや国際援助事業の撤退はいつも劇的で、立つ鳥跡を濁していく。金が生まれるところに支援が動く、やるせなく苦々しい国境の現実。――(本書229ページ)

このような医療活動をいまだに人権侵害を含めて危機的状況にあるタイ・ミャンマーの国境で行っているという事実。そしてその上で「人間の安全保障」に基づく支援が実現されたという事実。このことを是非読者の皆さんに知っていただきたい。

2019年5月15日(水)10:33

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