上関原発工事に同時視聴者2千人

ユーストリームの「満月tv」で配信される現地からの動画

中国電力が2月21日未明に半ば強引に再開した上関原子力発電所(山口県上関町)の建設工事の様子が、工事の一時中止と話し合いを求める人らによってユーストリームで連日動画中継されている。作業員や警備員ら約400人を前面に立てて工事を指揮する中国電力に、建設中止を求める祝島住民を中心とした約140人が抗議と説得を継続。2か所からの中継に同時視聴者数は2千人を超えた。

■緊迫した現場を中継

上関原発の建設予定地は瀬戸内海に面した田ノ浦の海岸に位置し、約4キロメートル沖合には祝島がある。22日には建設予定地の陸上と海上から同時に中継が行われ、それぞれ1千人以上が視聴。中国電力側と、工事中止を求める人々が砂浜でもみ合う緊迫した状況を伝えた。23日夕方には、警備員らの下敷きになるなどして祝島の女性ら2人が負傷。その時の現場の様子も中継された。

同日昼の中継に登場した祝島の女性(75)は、地元に原発誘致の話が来た当時を振り返り「(中電側が)電気の話をする、(愛媛県)伊方町に無料で1泊招待するというので行ってみた。(原発がある)伊方の海の色は地元と全然違い、原発の中も見せてくれない。恐ろしいものが来ると思った」と話した。

■反応鈍いテレビ局 政治は動くか

現地からの中継をめぐっては、ユーストリームのチャット機能、およびツイッター上のハッシュタグ(#kaminoseki、#iwaishimaなど)を使って視聴者らが盛んに議論。工事の是非に始まり原発の要不要、あるいは自然エネルギーの可能性や地域経済の将来など、多様な話題で意見が交わされている。しかし立場の隔たりも大きく、感情的な意見のぶつかり合いや誹謗中傷も目立つ。

緊迫する現地だが、新聞各紙が報じるものの、テレビの在京キー局は至って反応が鈍い。23日夜現在、NHKオンラインのニュース検索では「上関」「祝島」「原発」のいずれの単語でも1本の報道もヒットしていない。

国の原子力政策は長らく政府や官僚が主導してきた。国民の意思を反映させる仕組みは不十分で、原発問題の一要因ともなっている。国民参加を通じた合意形成や自然エネルギーの普及促進なくして、原発への理解の取り付けも困難だろう。そうした状況下での今回の動画中継は、国民がエネルギー問題の一端を目の当たりにする契機にもなっている。

ここで注目されるのが政治の動きだ。社民党党首の福島瑞穂・参議院議員が中国電力本社へ建設計画の凍結を24日に申し入れると表明。また同日には自民党の河野太郎・衆議院議員も上関に現地入りするという。(オルタナ編集部=斉藤円華)2011年2月23日

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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