東電も白状?夏の電力危機ほぼ回避か

エアコンとの併用で節電効果が高い扇風機。今夏は品薄状態が続く (C)duck75.

東日本大震災の影響で懸念されていた今夏の電力不足だが、ここに来て大規模停電などの最悪の事態を回避できる公算が濃厚となってきた。日本経済新聞は12日、東京電力の藤本孝副社長が「夏場の電力需要は乗り切れるメドがつきつつある」との見方を示したと報じた。東京新聞は5月12日の時点で「真夏でも電力は不足しない」と伝えたが、それが裏付けられた形だ。

■火力が順次運転再開、節電効果も大

12日現在の東京電力管内の最大供給可能電力は5270万kW(キロワット)。同社は鹿島・広野の各火力発電所の運転再開などにより、供給電力の積み増しを重ねてきたが、7月末には5520万kW、8月末までには5620万kWを確保するという。

もちろん、電力に余裕が生じているのは同社の努力に加え、企業や家庭での節電効果も大きい。全国的に猛暑に見舞われた6月下旬以降、供給可能電力の上限に対して実際の需要量は約500~600万kWの余裕を残す日が続く。7月に電力使用制限令が発動されて以降は、工場の操業を週末にシフトするなど、大企業を中心に節電の取り組みが本格化している。

■原子力安全の刷新と低エネルギー化が急務

今夏の電力不足をいち早く否定した東京新聞の同記事の見出しは「東電また情報操作 狙いは原発存続?」。刺激的な見出しだが、日本の原子力を掌握してきた「原子力ムラ」の本音が垣間見える出来事が9日にあった。

同日夜のNHKの討論番組で、原子力安全委員会専門委員の奈良橋直・北海道大学教授は日本経済をジェット機に例えて「原発というエンジンがすべて止まれば失速して大きなリスクに晒される」と発言。日本経済を「ハイジャック」するかのような発言に視聴者からは「大学教授とは思えない頭の悪さ」等々と失笑の声がもれた。

それにしても、原子力の安全を司るべき人間が経済性に屈するとは言語道断だ。国民の努力により電力危機の回避がほぼ確実な今、求められているのは経済優先にびびる原子力安全体制の根本からの刷新と、自然エネルギーの積極導入を軸とした低エネルギー社会への転舵である。(オルタナ編集部=斉藤円華)2011年7月12日

editor

オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

執筆記事一覧
キーワード:

お気に入り登録するにはログインが必要です

ログインすると「マイページ」機能がご利用できます。気になった記事を「お気に入り」登録できます。
Loading..