省庁が東電や関電から電気を買わない理由

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6月、橋下大阪府知事が「大阪府庁は節電に協力しない」と語り、大きく報道された。理由は「府庁舎の電気は関西電力から買っていないから」。橋下氏はその日のうちに発言を撤回したが、この騒ぎによって、電気を作って販売しているのは、東京電力や関西電力という電力会社だけではないと知った人も多い。府庁舎の電気はエネットという電力小売会社から買っている。

正式には「特定規模電気事業者」(PPS)と呼ばれる発電設備を持った電力会社であり、電気を小売りしている。東電や関電は法律的には一般電気事業者という。

節電PRに余念がない経済産業省も実は、東電から電気を買っていない。今年度は昭和シェル石油から電気を買っている。昨年度は丸紅だった。この2社もPPSである。

経産省は毎年、一般競争入札を行い、電気を安く売ってくれる会社から買う仕組みだ。ノートや鉛筆を買うのと同じである。

霞が関の他の主要官庁も競争入札で電気を調達しており、ほとんどの官庁が東電から電気を買っていない。東電と一体で原発を推進し、「原発の電気は安い」と吹聴してきた経産省が東電から電気を買っていない。強烈なブラックジョークではないか。

PPS以外にも、自前で発電した電気を電力会社に売る独立系発電事業者(IPP)という形態の電力会社があり、これらは「第2の電力会社」と呼ばれるほどの強大な発電設備を持っている。大手電力会社と対抗するPPSは全国に45社ほどあり、各社とも人件費や広告費を徹底的に削っているので料金が安い。

さらに、この他にも、企業などが持つ自家発電設備がある。六本木ヒルズの森ビルの例が有名だ。電力調査統計によると、2011年3月末の自家発電所の発電能力は全国で5383万kw、東電管内だけでも1656万kwもある。100万kwの原発に換算すればちょうど54基分で、7月末で5680万kwという東電の供給力にも匹敵する。

自家発電は自社の電力需要を補い、停電に備えるための設備だから、そのままカウントできないが、余剰電力はかなりあると見られている。

PPSとIPP、そして自家発電による「埋蔵電力」があるにもかかわらず、現状では十分活用できずにいる。

それは、送電網を独占している一般電気事業者10社が、せっかく発電した大量の電力を柔軟に運用させないようにしているからだ。他社の電力を受け入れれば受け入れるほど、独占事業のうまみがなくなるのは、実にわかりやすい理屈だ。

橋下知事は「(節電が)できなかったら、原子力発電所必要でしょという議論にもっていかせるための脅しとしか感じない」とまで言っている。

自然エネルギー普及のために全量買い取り制にするのは当然だが、すでに存在する発電設備や電力を有効活用するために送電網を自由に使えるようにするほうが手っ取り早いのだが。(横山渉)

2011年8月8日(月)8:55

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