「食の循環」をテーマとして、龍谷大学農学部(2015年度開設予定)が昨年からシリーズ開催しているトークセッション。8月30日に行われた5回目は、農機メーカーのヤンマーからゲストを迎え、龍谷大学瀬田キャンパスでトークを繰り広げた。ヤンマーは、食料とエネルギー分野で世界的な展開を見せる企業。新しい農業のクリエイトを提案する龍谷大学のパネラーと、どんな議論を交わしたのか。(オルタナS関西支局特派員=近藤 浩己)
■ 増える人口、減っていく生産者
農作物の収量も就農者も増やさなければ、食は人を支えられなくなる――。そんな問題提起で口火を切ったのは、ヤンマー農機事業本部長の小林直樹氏だ。
国連の調査によると、戦後1950年に25億人だった世界人口は、2013年には71億人にまで増加しており、2040年には90億人を突破するとみられている。それまでに食物の絶対的な生産量を増やさなければ、深刻な食料不足に陥るという。
だが、日本の農業就業人口は総人口のわずか2%。新規就農者は2006年からの5年間で3割減少と、下降線をたどっているのが現状だ。
就農者が増えない原因として小林氏は「農業といえば『耕作放棄地が多い』『しんどそう』といったネガティブな情報ばかりが、日本に溢れているからではないか」と分析。そんな日本に対し、欧米では農業経営者の社会的地位が高く、農業は21世紀の成長産業として注目されていると話した。
それを受けて、龍谷大学の佐藤研司副学長は、「我々が身近で感じている食料事情と、世界で求められている食料事情には大きなギャップがある」と発言。毎日何万人という規模で餓死する人がいる一方で、日本では食糧の42%が生ゴミとして捨てられていると指摘した。
こうした日本の抱える食の矛盾については、食糧農業システム学科に就任予定の末原達郎教授も同意。「食の問題は、農業と一致して考えるところに根本的な解決がある」と述べ、これまでの農学部に見られる、研究に偏った学問ではなく、生産から消費までをつなげる学問を提案していきたいと語った。